地元当局はこの騒ぎについてコメントを控えているが、フォックスコンは23日に声明を発表。鄭州の自社の工業団地で「暴力騒ぎ」が起きたことを認め、「今回のような騒ぎを2度と起こさないため」従業員及び地元当局と話し合いを行うと述べた。
同社はまた、賞与は契約どおりに全額支給すると約束。寮内での感染者の隔離が不十分だという主張は事実ではなく、新たに雇い入れた従業員を迎える前に、寮の消毒作業を終え、地元当局の検査も受けたと述べた。
ゼロコロナは、中国の習近平(シー・チンピン)主席の公衆衛生上の看板政策だ。中国はこの政策で2年間コロナを抑え込むことに成功したが、感染性の高いオミクロン株が猛威を振るいだした今春以降、この政策の有効性が疑問視され、厳しいロックダウンに市民の不満が噴き出すようになった。
そうした不満を抑え込むため、中国当局はオミクロン株は重症化率が低いのを知りつつ、コロナは依然として致死性の高い怖い病気であり、感染が広がれば多数の死者が出るという警告を発し続けている。
フォックスコンの工場で10月末以降に労働者の大脱出が始まったのも、こうした警告のせいだろう。労働者の多くは寮から数十キロ先の出身地まで徒歩で逃げ帰ったという。
地元当局が人手不足を解消
世界で販売されるiPhoneの70%はこの工場で組み立てられているため、ここで騒ぎが起きれば、iPhoneの供給に直接支障をきたすことになる。
「コロナによる規制で、中国・鄭州にあるiPhone14ProとPro Maxの主要な組立工場は一時的に影響を受けた」と、カリフォルニア州クバチーノに本社を置くアップルは11月初めに発表した。
アップルはサプライチェーンの多様化のため既に委託先をインド企業に切り替え始めており、河南省当局は地元に金を落としてくれるグローバル企業に逃げ出されては大変と、フォックスコンの工場周辺の村や町に大号令をかけ、人手不足を補う臨時の補充要員をかき集めた。共産党の下級幹部まで動員されたもようだ。
臨時の人材募集には10万人を超える応募があったと、フォックスコンの幹部、ヤン・ハンは、中国の政府系経済メディア「第一財経」オンライン版に語っている。
「次のステップは、引き続き工業団地でしっかりと感染対策を取ること」だと、ヤンは述べ、「非常に厳しい時期」に助けてくれた地元当局に感謝の意を表した。