日本では、いまだに年功序列による内部昇進でトップに就く経営者が多く、また、国際競争が過熱するなかでもグローバル経験に乏しい経営者が多いなど、経営戦略に長けていない人物が企業の舵取りをしているケースは少なくありません。
日本経済を再浮上させるためには、「無能な」経営者には退席していただき、有能な人物を経営者に据える必要があります。生産性向上のため、資本や人に投資をするかどうかを決めるのは経営者です。積極的な姿勢で経営を行う人がトップに立てば、付加価値は高まり、ひいては日本経済を再び成長させると考えられます。
労働市場を徹底的に流動化させたほうがいい
労働生産性を高めるためには、経済全体で、生産性の高い企業が進出し、生産性の上がらない企業が退出するという新陳代謝が行われる必要があります。また、労働市場で適材適所が達成され、労働力の効率的配分が行われることが重要です。
これらを実現するものが流動的な労働市場です。労働市場が流動的な経済では生産性が高くなる傾向にあることはデータでも示されています(図表2)。
労働市場の流動性を高めることのメリットは、労働生産性を高めるだけではありません。公共投資などの財政政策は生産と雇用を増大することが期待されますが、その効果は労働市場が流動的であるほど大きいことをIMFの調査研究は示しています。財政政策では、限られた予算をいかに効率よく使うかという「賢い支出」が重要ですが、この点からも労働市場の流動性を高めることが大切だと言えます。
ここであらためて流動的な労働市場とはどのようなものなのかを考えましょう。流動的な労働市場とは、労働力の移動が活発であるというだけでなく、労働者が移動する自由も十分にある市場のことです。
流動的な労働市場では、解雇が容易になり、雇用が不安定化するため、労働者にとってはよくないとの懸念がありますが、むしろ逆です。個人が最適なキャリアを実現するためには、労働者に多くの雇用機会を与える流動的な労働市場のほうが望ましいと言えます。
好きでもない会社にしがみつく必要はない
労働市場が流動的だからといって、人々は必ずしも活発に労働移動をしなくてはいけないというわけではありません。これまでのように、学卒後、就職してから長期にわたり同じ会社で働きたいという人もいるでしょう。そのようなキャリアが可能で、また、労働者もそれを望むのであれば、流動的な労働市場は決して、それを否定するものではありません。