育休を取りやすい職場にする義務がある

ただし、制度があるだけでは利用は進みません。職場に育児休業の取得を阻むような雰囲気があると、実際に取得を申し出るにはハードルが高いかもしれません。そのようなハードルを取り除くため、事業主に対して、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、労働者への個別周知・意向確認の措置を義務化する法改正も行われています。

育児休業申請書とボールペン
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

まず、雇用環境の整備については、育児休業・産後パパ育休に関する研修や、相談窓口の設置を行うなどの措置を講じるよう求められています。

次に、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対して、以下の事項を個別に周知し、育児休業の取得意向を確認することとなりました。

【周知事項】
1.育児休業・産後パパ育休に関する制度
2.育児休業・産後パパ育休の申し出先
3.育児休業給付に関すること
4.労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

【個別周知・意向確認の方法】
①面談(オンラインも可)
②書面交付
③FAX(労働者が希望した場合のみ)
④電子メール等(労働者が希望した場合のみ)

①~④のいずれかで行う

大企業は社員の育休取得状況を公表へ

日本は離職率が低く、業務プロセスを標準化しようという意識が希薄なため、仕事が属人化し、業務の再配分がスムーズにいかないことが効率化の妨げになっていると言われています。また、短期的な成果よりも長期的な成長を重視する文化があり、会社の収益にどのぐらい貢献したかではなく、労働時間や仕事のプロセスを評価しがちであるとも指摘されています(※5)

このような日本の働き方の特徴が、男性の育児休業取得を阻む一因かもしれません。2023年4月1日以降、常時雇用する従業員が1000人を超える企業は、育児休業の取得状況を公表することが義務付けられる予定です。業務プロセスの標準化と業務の再配分は働き方改革と不可分であり、それらが実現することによって、性別に関わりなく仕事と子育ての両立ができる社会となっていくことが期待できます。

※5 大湾秀雄『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』(日本経済新聞出版社)

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