「家事・育児は妻担当」は家計を圧迫する

育児休業をどう取得するかは、短期のマネープランにとどまりません。子育て期はキャリア形成の基盤を作る大事な時期と重なります。夫と妻がお互いのキャリアの方向性をすりあわせながら、ライフプランとキャリアプランを不可分のものとして考えていく必要があります。たとえば、ライフは妻担当、キャリアは夫担当などと縦割りで分業するのは、リスク管理の面からも長期的なマネープランの面からもお勧めはできません。

ところが、ほとんどの家事・育児を妻が担うというケースはいまだに多いものです。そのため、仕事との両立が困難になり、妻が離職もしくはパートタイムに移行するとなれば、その影響は年金後の生活にも及びます。なぜなら、現役時代の収入が減るだけでなく、将来の厚生年金受給額も減ってしまうからです。

減少した収入分を家計の節約で賄うのは現実的ではありません。また、年金受給額が少なければ老後のための貯蓄を増やす必要があります。しかし、それ以前に立ちはだかるのが子どもの教育費問題です。減少した収入でこれらの問題を乗り越えるのは、なかなかハードルが高いと言わざるを得ません。

いまの女性は「永久就職」なんてできない

今年6月に決定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」でも政府の強い危機意識が表れています。

日本の女性の半分以上が90歳まで生きる時代となり、結婚すれば生涯、経済的安定が約束されるという「永久就職」はもはや過去のものとなったにもかかわらず、有業の既婚女性の6割が所得200万円未満、単身未婚女性の約半数が所得300万円未満であると指摘し、女性本人のためにも、また我が国の経済財政政策の観点からも、喫緊の課題であると述べています。

7月には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)の厚生労働省令が改正され、労働者301人以上の企業に対して、男女の賃金差異の公表が義務づけられました。

育児休業制度には、男女ともに仕事と育児を両立できるようにという意味合いがあります。子育てしながらの共働き生活をスムーズに回すためのインフラ作りと、子どもとの関係性を構築する期間と位置付けてください。育児休業明けの生活をシミュレーションし、仕事と家事、育児を回していくためには何が必要なのか、夫婦互いにどのような役割を担うのかといったことを具体的に話し合いましょう。

今回の改正では、育児休業制度の柔軟な活用が可能になりました。夫婦それぞれのキャリア展望や家族全体のライフプランについて、しっかりと話し合う時間を作ってみてはどうでしょうか。