ロイターがブルームバーグの報道を基に伝えたところによると、マスク氏は11月10日に送信したレターのなかで、広告収入の減少を補うためにはサブスクリプションによる収益を向上する必要があると説いている。
これが不可能な場合、Twitterは「来るべき景気悪化を乗り切る」ことはできないだろうとマスク氏は述べ、会社存続に危機感を示した。
米有力テックメディアのアーズ・テクニカは、「マスクはTwitter従業員に対し、来年Twitterは10億ドル単位の損失を生み出すおそれがあり、倒産は起こりえる事態だと語った」と報じている。
記事はこの発言を念頭に、「イーロン・マスクがオーナーとなってからわずか2週間で、Twitterへの信頼は過去最低となるかもしれない」との厳しい予測を示した。
「恐怖戦術」にすぎないとの見方もあるが…
Twitterが実際に倒産に至る可能性はあるのだろうか? 発言は危機感をあおるパフォーマンスにすぎないと切り捨てる見解がある一方、米メディアの一部には、現実的なシナリオだと解釈する向きもある。
ブルームバーグは、従業員を締め付けモチベーションを高めるための「恐怖戦術」にすぎないとの見方を示している。赤字を垂れ流しつつも安穏と過ごしてきた社内各部署に対し、発破をかけるねらいがあった公算は高い。
記事はマスク氏がすでに、リモートワークの廃止や無料の食事特典の打ち切りなど待遇面を変革しつつあると振り返る。さらに、「いずれにせよマスクは、従業員のモチベーション向上という表向きの理由の下、Bワード(『あの野郎』などと訳される罵り言葉)を多用することで知られていた」とも述べ、独特の生産性向上術を使う人物であるとも明かした。
倒産の危険性を匂わせる今回のレターも、こうした従業員管理術の一環という側面は否めないだろう。
利益を生み出さない赤字体質
しかし一方で、現状を放置すれば倒産に至ることも十分に考えられる。
Twitterは世界で最も知名度の高いソーシャルメディアのひとつでありながら、これまでほとんど利益を生み出していない。ニューヨーク・タイムズ紙は、過去10年間のうち8年間で赤字を計上していると報じている。
こうした状況にもかかわらず、これまでであれば、Twitterの倒産危機といった話題を耳にすることはほとんどなかった。米公共ラジオ放送のNPRは、むしろマスク氏の新体制下で状況が悪化したとみる。
記事は従来のTwitterを経営的側面から評価しながら、「さほどガツガツした企業というわけではなかった」と表現している。収支は時折黒字を計上する程度であり、純粋な収益という意味では好調とは言いがたかった。それでありながら、「Twitterに倒産の運命が迫っていると真剣に議論する者など、これまで誰もいなかった」との指摘だ。