SNSアカウントの消去が、デマ拡散の一因になってしまった
一部報道では、電話をかけたことがドライブレコーダーに残っていたと報道されているが、ごみ清掃車両のトラックと衝突した時点で電装系がズタズタに破壊され遮断されたことから、そもそもレコーダーにその後の音声が記録されることはないことは自明である。
警察の記者会見の際、レコーダーに「危ない」という妻の声が残っていたとの話に続いて、息子に電話をしていたとの話が続いたため、音声が残っていたと記者が勘違いしたのではないかと推測される。
事故後、SNSには家族や知人の情報を含めた写真やフォロー・フォロワーが公開されていたことから、長男がアカウントを消去した。
SNS時代に情報拡散を防ぐことは、家族のみならず第三者のプライバシーを守るためにも、重大事件の加害者家族であれば真っ先に行わなければならないことである。そうしなければ、親族や知人にまで取材が殺到したり、情報が世間に出回ることで、取り返しのつかない迷惑をかけることになってしまうからである。ところが、事故直後の行動を巡る報道によって、幸三があたかも不都合な事実を隠蔽し、逮捕を免れようとしており、息子も加担しているという印象が植え付けられてしまった。
息子が電話を即時に解約した、グーグルストリートビューから自宅を見えないようにした等のデマが拡散したが、幸三の過去をウェブ検索した人々が情報にアクセスできない苛立ちから、怒りの矛先を家族に向けるようになっていたのではないか。
家族は警察に逮捕して欲しいと頼んでいた
実名が報道され、旧通商産業省の元官僚である事実が公になると、官僚のコネを利用して逮捕を免れたという「上級国民バッシング」が始まった。発端はやはり、交通事故に関係するある事故の報道からである。
この事故から2日後、神戸市で60代の男性が運転する市営バスが暴走し、男女2人が死亡、6人が負傷する事故が起き、運転手がすぐ逮捕されていたにもかかわらず、幸三が逮捕されないのはおかしいという主張が広まっていた。幸三は胸部骨折に加えて心筋挫傷とそれに伴う不整脈があり、入院して3日間は集中治療室に入った。
同乗していた妻(当時87歳)は、肋骨が多数折れて陥没呼吸となり、集中治療室に20日入ったうえ、2回手術を行っており、生死の境をさまよう症状だった。このような状態では、逮捕を行う警察の負担が大きいどころか、まともな捜査が可能とは到底思えない。
さらに、退院時には家宅捜索時を含めてすべての証拠保全がなされていたため、在宅捜査で十分ということは、後に専門家たちもさまざまな媒体でコメントしている。
「家族としてはむしろ逮捕してもらいたかったんです」
長男は、両親の身の安全を考え、むしろ身柄を拘束してくれるように、警察に頼んだことがあった。