相談できる中高年になろう

中高年層は、上のような困難を抱えると同時に、自分の仕事を他者に相談する率も減っていく。こうした「他者への相談しなさ」が、40代以降の転職後の困難を、さらに解決から遠ざけている。

企業は、こうした「相談しなさ」含め中高年層の転職の落とし穴を十分に理解し、サポートするべきだろう。転職者を「お手並み拝見」的に見がちな職場に先回りし、仕事やキャリアについて相談できる人を事前に周りに確保し、紹介しておくことが望ましい。

特に性役割分業意識が根強い日本社会において要注意なのは、男性だろう。「仕事こそが人生そのもの」で、人に頼らず弱音も吐かないといった「男性らしさ」の規範は、転職後の適応の邪魔になる。

定期的な人事面談だけでなく、上司や同僚、年下の人へ積極的なケアを依頼したり、隣の部署の上司などナナメの関係にある人に「ななメンター」になってもらったりすることもできる。昨今では、オンライン上でカウンセリングやコーチングを行ってくれる外部サービスも多くある。採用活動中は積極的に入社を口説くのに、入社後は放ったらかしになりがちな転職者へのサポートは、多くの会社で十分とはいえない。

オフィスのエレベーターホールで立ち話をする二人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/stockstudioX
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職場で「孤独」にさせない取り組みが不可欠

40代以降は、自分に合いそうな求人が若い頃ほど豊富にあるわけではない。

少ない選択肢の中から即戦力になれそうな転職先に飛びついてしまい、入社後は実力を早く発揮しようと焦ったり、前職のやり方にこだわったりして職場でのサポートを得られず、「うまく馴染めない」と早晩辞めてしまう……。

これが、中高年層の転職にありがちな「負のシナリオ」だ。さらには、仕事やキャリアについて、他者へ相談する率も減少していく。

今後、高齢化とともに中高年層の流動性がこれからも伸びていくことが予想される。そうした中で、40代からの幸福な転職を少しでも増やすためには、人事や所属部署だけなく、隣の部署や外部相談サービスも活用した仕事やキャリアに関するアドバイスや指導といったサポートなど、転職後の中高年層を職場で「孤独」にさせないための取り組みがポイントになるだろう。

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