「ポジティブ」→「ネガティブ」が好印象
また、最初の印象が大事だということについて、心理学者のソロモン・アッシュの有名な実験を紹介しましょう(*4)。
実験では、人の紹介をするときに、言葉を2パターン用意しました。
紹介② 嫉妬深い 頑固な 批判的な 衝動的な 勤勉な 知的な
2つのパターンは、まったく同じ言葉を使っています。違いは順番だけです。
ところが実験の結果、人が受ける印象は大きく変わりました。
ポジティブな言葉が最初に来ている①には肯定的な評価が得られました。
一方、ネガティブな言葉が先に来ている②には否定的な評価が多かったのです。
言葉の順番を変えただけで印象は変わってしまうのです。
人の感覚は、なんと騙されやすいことでしょう。
「温かいコーヒー」が印象を変える
また、人を騙すのは言葉だけではありません。
「温かいコーヒー」を一緒に飲みながら話すだけで、相手の印象が変わることがわかっています。
コロラド大学のウィリアムズとイェール大学のバーグの研究で、温かいコーヒーを手に持っていると、冷たいコーヒーを手に持っているときより、相手のことを「寛大で気遣いのできる人だ」という印象を抱く傾向があったそうです(*5)。
こうして見てくると、人の印象なんて、ちょっとした要因で変わってしまうのだということが分かります。ということは、相手に与える印象を完璧にコントロールしようとしても、まず難しいということです。
もちろん、完璧は目指せなくても、こういった知識をあらかじめ蓄えておいて、最大限の演出をしていくこともできます。
どこまでやるかは好みの問題ではありますが、無理に良い自分をずっと演出しすぎたり、あまり気にしすぎると心が疲れてしまいます。
とりあえず、第一印象だけはポジティブな面を見せるように心がける。それくらいに考えておいた方が、気持ちはラクになるでしょう。
(*4)Asch, S. E. (1946) . Forming impressions of personality. Journal of Abnormal and Social Psychology, 41, 258–290
(*5)Williams, L. E., & Bargh, J. A. (2008) . Experiencing physical warmth promotes interpersonal warmth. Science, 322 (5901) , 606–607.