主婦が嫌いな家事ナンバーワンは、アイロンがけだそうだ。各種調査によっても、年末の換気扇掃除に負けるくらいで、ほとんど通年で1位の座を守っている。
生活なんでも調査隊員1号の私の家でも、アイロンがけはめったに見られない。かつて、スチーム用の水タンクをカビらせたこともあるくらいだ。
「トイレ掃除より嫌われているアイロンがけを、なんとか楽にやれるようにしたい」と、日々アイロンの上手な使い方を教えているのが、パナソニックでマーケティングの仕事をしている齋藤克哉さんだ。
齋藤さんも3年前にアイロンを担当する前は、アイロンがけは「熱い、重い、疲れる」と敬遠していた。ところが、今や子供の給食用かっぽう着などのアイロンがけは、齋藤さんの役目だという。もちろん、自身のワイシャツやズボンなどもかける。
「きれいにかけられると、達成感がありますね。夫がアイロンがけを担当すると、奥さんにも喜ばれますし。夫婦円満の秘訣にもなります」
というわけで、齋藤さんにアイロンがけのコツを教わることとなった。
【コツその1】アイロンはゆっくりと軽く動かす。
シワを取ろうと、ゴシゴシと強く押し付け、素早く動かす必要はない。齋藤さんは「力が入らないように」と、アイロンを握るときに小指を立てていたくらいだ。
そもそもシワは繊維が固まってできたもの。力ずくで伸ばそうと思っても無理なのだ。スチームで水分を与え、繊維の結合を切って、改めて形を整えてやらなければならない。
ちょうど、寝癖のついた髪の毛をくしだけで伸ばそうとしてもできないのと同じだ。水でぬらすと、髪の毛の分子の結合が切れて簡単に直せる。
だから、アイロンがけでは、スチームが十分布地に行き渡ったほうがいい。アイロン台も、ふすまのような板状ではなく、スチームが抜けやすいメッシュ構造がお薦めである。
【コツその2】「手アイロン」を活用する。
アイロンをかける前に、手で布地を整えて伸ばしてやる。ワイシャツの袖の部分にアイロンをかけるときなど、縫い目をそろえて、それを基準に手で布地を伸ばす。その際、下側になっている布地もシワが寄っていないか、手の感触で確かめる。
この「手アイロン」は、バカにできない。ジャケットなどは、ハンガーにつるしたまま、アイロンで近くからスチームを当てて、手で引っ張るだけでシワは取れてしまう。蒸気には、繊維についたニオイの成分を分解する効果もあるので、ニオイ消しにもなる。
アイロンのスチーム機能だけを使うこの方法を「ハンガーショット」と呼ぶ。これなら隊員1号でも簡単にできそうだ。
伸びてしまったセーターの袖口も、スチームをたっぷり当てて、縦に丸めてギュッと握ってやると、元通りになる。
フリルなども、スチームをかけて手で形を整えてやるだけで、ふんわり感が十分に戻る。
【コツその3】アイロンは小さい部分からかける。
大きい部分を先にかけると、小さい部分をかけるときに、大きい部分にシワができたりするからだ。
ワイシャツの場合、かける順序は以下がお薦めだ。右袖→左袖→右肩→左肩→右前身ごろ→背中→左前身ごろ→襟。襟が最後になるのは、アイロンの熱が冷めないうちに、ボタンをしてハンガーにかけるときれいに仕上がるからだ。