睡眠で大切なのは、長さではなく質

私は、自らの健康増進のために、ジムなど特別な場所に通うことはしていません。生活そのものが若返りのためのステージととらえているからです。

その最初のステージとなるのが、早朝に布団から飛び出すとき。「さあ、ミトコンドリアモードで今日もがんばるぞ」自分にそう声をかけます。

早寝早起きは、ミトコンドリアの活性化に欠かせない生活習慣です。ときどき「睡眠は長いほうが長生き」という人がいますが、1日12時間を睡眠時間に費やしてしまえば、人生の半分を寝て過ごすことになります。それはかなりもったいない生き方ですね。

睡眠で大切なのは、長さではなく質です。睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。レム睡眠の「REM」とは「急速眼球運動(RapidEyeMovement)」という意味で、脳は夢を見ながら強く活動し、記憶の整理をしています。

明け方になると、このレム睡眠になります。レム睡眠時は脳が覚醒し、熟睡はできません。

では、いつ寝るとよいのでしょうか。夜10時から夜中の2時までが「睡眠のゴールデンタイム」です。このとき脳は「ノンレム睡眠」状態になります。ノンレム睡眠とは熟睡の状態を指し、脳は完全に休息モードになります。寝入りばなはノンレム睡眠でぐっすり休めて、脳からは成長ホルモンが分泌されます。それによって、「寝る子は育つ」というように、子どもは体が成長します。

一方、大人にとっての成長ホルモンは「若返りホルモン」です。肌や消化管の粘膜を修復し、がんを予防する作用もあります。しかも、成長ホルモンはミトコンドリアを介して、酸素と一緒に脂肪を燃焼し、体をミトコンドリアモードにします。寝入りばなに体温が上がって寝汗をかくのはこのためです。

早起きは体にとって「徳」なことばかり

昔から日本人は、朝目覚めると、お天道様に手をあわせてきました。「早起きは三文の徳」といって、朝遅くまで寝ていることを嫌いました。では、早起きすると、どんなよいことがあるのでしょうか。

人間は本来、昼間働いて夜休む「昼行性」の動物です。朝の光が目に入ってくると、脳内の松果体という器官が刺激され、体内時計がリセットされます。

次に、活動時に働く交感神経がオンになって、体が「お仕事モード」になります。すると、ミトコンドリアが産生したエネルギーによって、心拍数や血圧が上がり、全身に力がみなぎって活動的になるのです。

しかも、朝日を浴びると、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」が脳内にだくだくと分泌されます。これによって、一日中、幸せを感じられます。

つまり早起きは「体内時計」「交感神経」「幸せホルモン」の3つを活性化できます。これこそまさに「三文の徳」です。