大手新聞のコラムが「コメ食否定論」

その当時、さる有名な大新聞のコラムにも、「コメ食否定論」が堂々と掲載されていた。

「近年せっかくパンやメン類など粉食が普及しかけたのに、豊年の声につられて白米食に逆もどりするのでは、豊作も幸いとばかりはいえなくなる。としをとると米食に傾くものだが、親たちが自分の好みのままに次代の子供たちにまで米食のおつき合いをさせるのはよくない」

有名大学教授、名だたる大新聞がこぞってコメ食否定論を唱えていたのだから、日本社会への影響は非常に大きかっただろう。

日本の食を変えた「洋食推進運動」

当時は世界の農業生産力が高まっており、米国では小麦の生産過剰が問題となっていた。

そのため、米国は日本に余剰小麦を輸出しようとする。

その売り込み戦略として展開されたのが、悪名高き「洋食推進運動」である。

「日本人の食生活近代化」というスローガンのもとに、「栄養改善普及運動」や「粉食奨励運動」が日本各地で展開されることになった。

これらはまさに、欧米型食生活を「崇拝」し、和食を「排斥」する運動だった。

キッチンカーという調理台つきのバスが二十数台も用意され、それらが分担して都市部から農村部まで日本全国津々浦々を巡回し、パン食とフライパン料理などの試食会と講演会を行った。

キッチンカーでハンバーガーを販売する人
写真=iStock.com/shih-wei
キッチンカーが日本全国を巡回した(※写真はイメージです)

前述の『頭脳』の著者、林髞氏も、この講演会にしばしば呼ばれていた。

こうした宣伝活動によって、本来は洋食に反対する立場のはずの農家の人々までが洗脳され、欧米型食生活を崇拝するようになってしまった。