カロリーより「血糖値曲線」に気をつけたほうがやせられる
これでもう、わかってもらえたはずだ。カロリーを減らせば健康になるというわけではない。同じカロリーを食べていても、その分子を変えると、体調はよくなっていくのだ。
では、減量については? 減量こそがカロリー制限の目的だろう。だれもがそう思ってきたはずだ。ところが、この神話も崩れさった。さきほどの研究にそのヒントがある。何人かのティーンエイジャーの被験者が、以前と同じカロリーをとりながら体重が減りはじめたからだ。ありえないって? いや、長年聞いてきた話には明らかに反するが、実際に起こったのだ。
それどころか、最近の研究で、血糖値曲線が平坦な人はカロリーをたくさんとっても、カロリー摂取量は少ないが血糖値曲線が平坦でない人より、脂肪が減りやすいことがわかっている。ミシガン大学の2017年の研究によれば、肥満の被験者のうち、一方のグループが血糖値曲線を平坦にするように努めると(他方より多くのカロリーをとっていても)、カロリー摂取量は少ないが血糖値を気にかけなかったグループより、体重が減少した(前者の約7.7キログラムに対し、後者は1.8キログラム)。
インスリンも関与している。血糖値が下がると、インスリンも下がる。減量に関する研究60件を分析した2021年のレビュー研究によれば、体重減少の前に、まずインスリン値が減少することがわかっている。
怖がらなくていいカロリーもある
実際、血糖値曲線が平坦になるよう心がけていれば、カロリーをまったく無視していても体重が減るようだ。とはいえ、多少の分別はわきまえてほしい(もし1日1万キロカロリーのバターを食べたら、血糖値曲線が平坦なままでも体重は増えるだろう)。血糖値スパイク(血糖値の急激な上昇)を起こさないよう気をつければ、カロリー計算をせずに満腹になるまで食べても、体重は減っていく。
血糖値スパイクを抑えるカロリーなら、つまり分子が食物繊維や脂肪やタンパク質なら、怖がらずに食事に加えることができる。ドレッシングをかけたサラダを添えた場合、そのカロリーは役に立つ。血糖値とインスリン値を低く抑えるし、サラダの後で食べる食品のカロリー吸収も減らすからだ(食物繊維がつくる網のおかげである)。結果として、長時間お腹がすかず、たくさんの脂肪を燃やすことができ、体重も増えずにすむ。
この論理を裏返せば、食事にグルコースや果糖を加えると血糖値スパイクが増えるので、体重や炎症が増え、満腹感が減る。