「テレビ局」「新聞社」などの組織はあまり信用されていない
しかし一方で、同様の調査において「テレビ局」「新聞社」に対する信頼を尋ねた場合には、これを「とても信頼している」「かなり信頼している」とした回答者は4割を下回っていた。
マスメディアという存在は重要だと思っており、発信される情報についても一定の信頼を置いているが、それを実際に担っているテレビ局・新聞社は信頼していない人が多いということである。調査主体がNHKというテレビ局の関連団体であるにもかかわらず、手厳しい調査結果が示されたといえるだろう。
さらに、この点について、著者と三浦麻子は2017年にWeb上で追加実験を行い、信頼の測定対象をテレビや新聞とするか、それともテレビ局や新聞社など組織であることを明示するかという質問文の違いがもたらす影響を検討した。その結果、他の要素がすべて同じであったとしても、対象が組織であることを明示した場合に、信頼が低く評定されることを確認した。
機能としてのマスメディアは信頼されているが…
日本においては「マスメディアが不要である」と考える人は少数派である。これは前述のマスメディアが持つ機能を考えるならば、日本社会にとって好ましいことであり、またテレビ局や新聞社といった既存のマスメディア事業者にとっても朗報と言えるだろう。しかし、一方で多くの人々はマスメディアを妄信しているわけではなく、いま現在それを担う事業者が十分な信頼を得ているとは言い難い。
その役割においても人々の信頼という観点からもマスメディアが決して「オワコンの不用な存在」ではない以上、既存の事業者は人々からの信頼を向上させていくことが求められているのである。それができなければ、「マスメディアが果たしている役割を他の誰かが果たしてくれるのであれば、いまある事業者は無くなっても構わない」と人々が判断する可能性が高いことを、調査結果は示唆している。