できもしない政策を掲げ、やるべき戦略を放棄している
私に言わせれば、何か努力すれば、人口減少を止められると本気で思っているのだとしたら、そちらのほうが問題だと思います。本稿では、主に出生の話に終始しましたが、今後世界中の人口減少を発生させる要因は、少子化ではなく多死化です(<「戦争中と同じ人数が毎年死んでいく」これからの日本を襲う“少産多死社会”の現実>参照)。
出産可能年齢の女性人口は今後も減り続けるので出生数が上昇する見込みはないわけですが、それ以上に多産時代に生まれた高齢者たちが一気に寿命を迎える時代が、はやければ今年から到来し、少なくとも50年以上は続きます。
社人研が出している推計に基づけば、単純計算して、2022年から2100年まで合計1億1576万人が死亡し、生まれてくるのはわずか4728万人程度。差し引き約6850万人の人口が消滅する。つまり今の1億2000万人の人口は、2100年には半分の6000万人程度になってしまうのは避けられない現実なのです。
それでも多少出生率をあげることで、なるべく減少時期を後ろ倒しにしていくことは無意味だとは思いませんが、それでもやってくる未来像に大きな変化はないといえます。であれば、望むと望まないとにかかわらず、やってくる現実なのですから、むしろそこから目をそむけてしまうほうが無責任というものでしょう。
それ以上に「できもしないことを、さもみんなが頑張ればできるかのごとく誤認させ、本来今やるべき未来の適応戦略を放棄してしまう」ことが、次世代の子どもたちにとっても害悪なことではないでしょうか。