遣隋使の時代と何も変わっていなかった中国
【つきじい】世界で一番人口の多い国は、当時も、今も同じじゃ。
【小太郎】あっ……中国?
【つきじい】うむ。ところが、当時の中国――清という王朝だったが、簡単に貿易をさせてはくれなかった。「貿易したかったら、頭を下げろ」というのじゃ。
【小太郎】は?
【つきじい】「清の皇帝は世界で一番偉い。イギリス王は家来となって、頭を下げろ」というのじゃ。
【小太郎】まーだ、そんなこと言ってたんですかぁ?
【つきじい】そうじゃ。遣隋使の時代と何も変わっていなかった。
【小太郎】「バカにするな!」と頭にきますね、イギリス人。
【つきじい】中国はどうしてバカにしてくるのか? イギリスを小国だと思っているからだ。
【小太郎】確かに、中国から見れば小国だし……。
【つきじい】「戦争を起こしてボコボコにしてしまえ!」となった。
【小太郎】ちょ、ちょっと待って、いきなり戦争ですかぁ?
戦争を起こすために、イギリスが実行した奇策
【つきじい】戦争に勝てば、開港させてイギリス製品を売り込める。しかし戦争を始めるには、もっともらしい理由が必要じゃ。
【小太郎】「おカネもうけのため」、じゃカッコ悪いですよね。
【つきじい】最初は、「清が、イギリス商品を没収した」と言いがかりをつけた。
【小太郎】綿製品ですか?
【つきじい】アヘンじゃ。麻薬の一種じゃな。イギリス商人は、アヘンを中国に売り込んだ。
【小太郎】ええ~っ、麻薬を売ったらダメでしょう!
【つきじい】だから清の政府はアヘンを没収した。そしたら「うちの商品を没収したな!」といってイギリスが攻めてきた。イギリス軍は産業革命で発明された蒸気船の軍艦を送り込み、清の帆船を次々に粉砕した。これがアヘン戦争じゃ。
【小太郎】ぼく、イギリスが嫌いになりました。
「このままでは日本もやられる…」という危機感
【つきじい】アヘン戦争の約10年後、ペリーが率いるアメリカ艦隊が江戸湾(東京湾)に迫り、江戸幕府を脅かして開国を要求した。
【小太郎】ヤバいです!
【つきじい】幕府はビビって開国した。日本国内では幕府の弱腰に対する怒りが渦巻いた。江戸で学んでいた軍学者の吉田松陰はペリー艦隊に衝撃を受け、地元長州(山口)の松下村塾で教え始めた。
【小太郎】どんなこと教えたんですか?
【つきじい】外国語、世界の地理、国際関係、軍事を教えた。身分に関係なく誰でも学ぶことができた。松下村塾で学んだ高杉晋作は、世界を見てみようと旅立った上海で、植民地のようになった清国を見た。「このままボーっとしていたら、日本もやられる……」