口座番号→名前→SNS→住所を特定
特定屋がストーカー事件に悪用された事例もある。2020年6月、埼玉県の30代の男が20代の女性に対するストーカー規制法違反容疑で逮捕された。男は、特定屋に女性のSNSアカウントを特定させていた。
男は出会い系サイトで女性と知り合い、交際を断られていた。慰謝料を払う名目で口座番号を聞き出し、振込先から女性の名前を把握。ネットで見つけた復讐屋、つまり特定屋に依頼して女性のSNSアカウントを特定し、投稿内容から住所を突き止め、郵便物を勝手に転送したり、水道を止めたりする嫌がらせを繰り返していたのだ。
一般に公開されている情報で個人を特定すること自体は罪ではない。そのため特定屋が罪に問われることはこれまでなかったが、ストーカーなどの犯罪に悪用された場合は、共犯の罪に問われる可能性もあるのだ。
利用者も特定屋と匿名でやりとりできるため、安心して依頼してしまうのかもしれない。しかし上記の例も、個人情報を知ったことでストーカー化して逮捕されるに至ったが、知らなければそのまま諦められていたかもしれない。
時差投稿やフェイクを混ぜる対策が有効
このように、写真や動画、固有名詞などでは多くの個人情報が特定されてしまう。投稿時間で行動時間帯がわかることもある。
顔、背景などには特に注意して、気になるものはスタンプなどで隠して投稿することも大切だ。リアルタイム投稿はせず、時差を付けて投稿するのもいいだろう。固有名詞や場所、所属がわかるものなどは、あえてフェイクを混ぜて投稿するのもいい。
アカウントに鍵をかけたり、投稿の公開範囲を友だちなどに限定したりするのも効果的だ。ただし、前述のように絶対に安心ではないので、制限しつつも特定につながるような内容は投稿しないようにしたい。
われわれの多くは複数のSNSを利用し、既に多くの投稿をし、個人情報を公開してしまっている。特定は決して他人事ではないのだ。少なくとも、投稿する度に見返して、問題がないか確認してから投稿する癖をつけるようにしてほしい。