「17歳の大学生」は名研究者になったかもしれない
政府が産学連携を推奨していることもあり、東大などには、企業から大型研究費が提供されている。ただ、企業は日本の大学よりも、米大学との共同研究を好み、多額の資金も提供する。彼はこう指摘する。「研究そのものより、人間関係構築や、米有名大学と共同研究しているという宣伝効果に利点を見出している」
理工系の知識や技術だけでは、経済発展につながらないことを、日本はこれまでも体験してきた。デジタル敗戦を重ねた日本企業だが、ネット検索エンジン開発では、進んでいた。だが、経営者が「他人のコンピューターを勝手に検索していいのか」として許可をしなかった。技術はあってもビジネスで負ける。
東大工学部卒業後、大手メーカーに勤務する技術者は指摘する。「石橋をたたいて渡るのではなく、たたいて壊してしまうのが日本企業だ」。こうした体質も変革する必要がある。
政府の「教育未来創造会議」は理工系拡充とともに、理系文系の枠にとどまらず横断的に学ぶ「総合知」を研究や企業活動に生かすことを挙げた。それが本筋のはずだが、理工系学部の新設などの拡充策で突っ走るところに、この4半世紀のやり方と似たものを感じてしまう。
冒頭で取り上げた、全国初の17歳の大学生・佐藤さんも、研究現場がもっと若手を育てる仕組みを手厚くしていれば、また違う結果になったかもしれない。研究の現場の声を聞き、制度を描くことが必要だ。そうでないと再びこの4半世紀を繰り返すことになりかねない。