最近のリフォームのトレンドはエコと健康です。特に健康は皆さんの関心が高い。カビや結露、シックハウスは誰でも気になるところなのでしょう。

カビと結露については、断熱材の利用が最大のポイントです。高機能の断熱材が多々あるなかで、究極の断熱材は何かというとそれは空気です。私はマンションの購入にあたっていつも真ん中の部屋を勧めています。人気があるのは角部屋ですが、湿度や温度調節の観点からいえば、フロアの真ん中に位置する部屋、さらにフロア自体も上下階に挟まれている部屋をお勧めします。左右、上下がほかの部屋で囲われている部屋は、四方を空気で包まれているようなものなので、カビや結露が発生しない、理想的な環境の部屋といえるのです。

中古の部屋を購入するときも、断熱性には注意が必要です。古いマンションでは、断熱材が入っていない場合もあります。リフォーム済みの部屋では断熱性のよし悪しは一見わかりづらいですが、北側の壁をペンキで塗りたくっているような部屋は、我々建築のプロから見るとかえって怪しかったりするものです。業者に聞くなどして、チェックしましょう。

シックハウスは、ひところより取りざたされなくなってきました。2003年に建築基準法の一部が改正され、いわゆる「シックハウス法」が施行されたからです。シックハウス症候群とは、建材に化学物質が使われているせいで、頭痛や吐き気などが生じることですが、法律の施行以降、各メーカーが化学物質の使用量を抑えるようになったのです。

中古物件を買うメリットの一つに、シックハウス症候群に悩まされることが少ないという点が挙げられます。建ててから年数がたっており、原因物質が揮発してしまっているからです。しかしリフォームをするとなると、化学物質を含んだ建材によってシックハウスを引き起こすこともあります。そこで一番いいのは、自然素材を用いることです。

自然素材は汚れやすく腐りやすいため、耐久性はケミカル製品に比べ劣ります。しかし、「もたせ方」があります。昔の茅葺き屋根の民家をイメージしてください。草と木の自然素材しか使っていない家が300年ももつのは、汚れたり腐ったりしたら、その部分を都度取り替えていたからです。傷んだところは、山から伐ってきた木をあてがいました。

茅葺きなどは、全部河原に生えている「葦」や「萱」を干して使っていたため、使い終わったものをどんどん捨ててもまた土にかえりました。家のそばにこれらの植物が生息しなくなって以来、トタン葺きなどの人工的な建材が増加し、シックハウスを招くことになりました。健康を保ち、環境に配慮するという意味でも自然素材のよさを見直してみてはどうでしょうか。

※すべて雑誌掲載当時