豊かな高齢者にも「5万円現金給付」

政治や経済の話は難しそうで興味が持てない、という声を筆者も耳にすることがある。

ただ、だからといって政治や経済に無関心でいるのは危険だと思う。

国民が無関心なせいで、誤った経済政策が実行されてしまうと、その被害は国民の生活を直撃する。最悪の場合、人命が奪われてしまうこともある。

いま、日本政府がそうした誤った経済政策を実行しそうな悪い予感を筆者は抱いている。

前述の通り、消費者物価指数は総合の伸び率が30年以上ぶりに3%を記録している。しかし、企業は資源価格の高騰こうとうに苦しみ、あまり賃金を上げられていない。その中で、物価の上昇が進めば、家計はますます節約に走る。

その場合、政府がお金を使うしかないが、岸田政権は実行するだろうか。

たしかに岸田政権は、物価高対策の1つとして住民税非課税世帯に対する5万円の現金給付を打ち出している。

この政策は果たして有効なのか。

もちろん、何もやらないよりはマシということもある。

しかし、値上げラッシュに苦しんでいるのは、住民税非課税世帯だけではない。全国民が苦しんでいる。

そもそも、住民税非課税世帯の半数近くは高齢者であり、なかには十分な資産を持つ人も含まれる。住民税の課税・非課税を決めるのはその年の所得額であり、資産額ではないかららだ。

そのため、貧しい若者から、裕福な高齢者へ資産を移転することにもつながってしまう。

消費減税のほうが望ましい

そういう不公平をできるだけ少なくするためには、一律で広くお金を配るような政策のほうが望ましい。

たとえば消費減税であれば、あらゆる消費者が恩恵を受けられるので、不公平が生じにくい。

「富裕層は物価高に苦しんでいないのだから、困っている人だけに現金給付するほうがよい」という意見も聞くが、困っている人をどうやって選別するだろうか。

消費減税によって、富裕層が通常より多く消費してくれれば、経済が活性化し、回りまわって「困っている人」の所得になるかもしれない。

一方、一部の人への現金給付では、経済を活性化させる効果も限定的なものにとどまるだろう。

なぜ政府は消費減税をせず、一部の人への現金給付にこだわるのだろうか。納得のいく説明が待たれる。