カナダのオンタリオ州ではメディアリテラシー教育を義務教育に

私がメディア情報リテラシー教育の重要性を知ったのは、一昨年まで在住していたカナダでの経験によるものです。カナダでは友人との会話で「新聞に環境問題についてこう書いてあったよ」と話題を振ると「どの新聞? どんなふうに書いてあったの」と媒体名まで確認されることが多くありました。

私が住んでいたトロントがあるオンタリオ州が、世界で初めて義務教育にメディアリテラシー教育を取り入れた自治体だった影響もあるのでしょう。日本との情報に対する感度の高さやメディアリテラシーの差を生活の中で実感することが何度もあったのです。

その影響で私もメディアリテラシーやファクトチェックに関心を持つようになり、実際にファクトチェッカーとして活動する中で、「日本にもメディア情報リテラシー教育が必要なのではないか」と思うに至りました。

取材中の安藤未希氏
写真提供=安藤未希

「メディア情報リテラシー」や「ファクトチェック」、あるいは「子どもとインターネットの付き合い方」というと、どうしても「だまされてはいけない」「間違いを拡散してはいけない」「知らない人とのやり取りは危険」などと言った恐怖訴求によって「正しく使える方法」を教えようとするものが多くなってしまいます。

ファクトチェックの基本は「意見と事実を分けて考える」こと

しかし一方で、子どもたちはデジタルネイティブ世代であり、ネットやSNSを遠ざけては生きていけない社会にもなっています。そこで私は楽しみながら情報を探し、見つけ、中身(情報の真偽や、発信者の意図)を確認することはできないか、と考えてきました。

イースターというアメリカやイギリスで行われるキリスト教の行事では、庭や広場に隠された色とりどりの卵を探して集める「エッグハント」が行われますが、この「エッグ(卵)」を情報になぞらえ、楽しみながら「メディア情報リテラシー」を身に付けてほしい、との思いから、社名を「インフォハント」としました。

現在は、学校の先生方の口コミや私自身の営業で、学校でのメディア情報リテラシー教育の出張授業を手掛けています。

ファクトチェックというと、現在の日本ではどうしても党派性や、相手の意見を批判するための道具だと思われてしまうこともありますが、ファクトチェックの基本は「意見と事実を分けて考える」ことにあります。あくまでも事実に立脚しながら、自由にものを考え、自分の意見を持つ。そうして一人ひとりの意見を尊重し、多様な意見や立場が尊重される社会をつくりたい、というのが私の思いです。

ある生徒さんが言ってくれたように「情報を読み解く力」はまさに「これからを生き抜くために必要な力」。日本でのメディア情報リテラシー教育に取り組んでいきたいと思います。

(構成=梶原麻衣子)
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