「うわ、だまされた」…中高生が引っ掛かった画像
また、東京五輪の聖火リレーでもデマ情報が出回りました。2020年に予定されていた東京五輪はコロナの影響で一年延期になり、2021年3月に聖火リレーが行われていました。その際に、ノーマスクのスタッフたちが沿道の人に手を振っている画像と共に「コカコーラのイメージめっちゃ悪くなった」と、ノーマスクを批判しているようにも受け取れるコメントが、ツイッターに投稿されました。
インターネットメディアのInFactは、これについて検証を行っています。このツイートは当時、3000リツイート、1万いいねを超える反響を得ましたが、投稿された画像は、実際には前年のコロナ流行前に行われたリハーサル時に撮影されたものだったのです。元のツイートには確かに「2021年の画像です」などの誤った説明がついていたわけではありませんでしたが、投稿されたタイミングから見た人の多くが「2021年現在のものである」と思い込んでしまうというミスリードを引き起こしてしまいました。
これらは「どこが間違っているのか」「間違えないためには何を確認すればいいのか」という事例として、授業でも活用しています。「実は事実とは異なるんです」と説明した時の生徒からの反応は大きく、時には「うわ、だまされた」「ヤバいな……」といった声も聞こえてきます。子どもたちにとっても、「うっかり本当だと思ってしまったけれど、実は誤っていた」という体験には、新たな発見があるのでしょう。
授業後の感想シートにも、「ネットに掲載されていることは事実だと思っていた。しかし必ずしもそうではなかった。生きていくうえで必要なことを知ることができた」と書いてくれた生徒もいたほどです。
今の子どもたちはYouTubeで情報に触れている
また一方で驚いたのは、先に紹介した「町中にライオン」の画像は、2016年、つまり6年前に拡散されたものなので、中高生の年齢からすれば「大昔に話題になった」ものなのですが、かなりたくさんの子どもたちが「知っている」「見たことがある」という点です。一体どこで見かけたのか聞いてみると、YouTubeだというのです。
確かに今の子どもたちは幼い頃からYouTubeで「おもしろ動画」などを見ていますから、その中で目にしていたのかもしれません。しかし「その画像は見たことがあり、知っている」けれど、「それがどんな文脈で使われ、問題になったか」までは知らない子どもも多い。また、「嘘なんでしょ」ということまでは知っていても、ライオンの画像が合成やCGだから嘘なんだと思っている子どももおり、「何がどう嘘なのか」までは把握できていません。
これでは「嘘だと知っていたから判断できただけで、知らない画像についてはだまされてしまう」、つまりリテラシーの再現性がないことになります。そのため、「何がどう間違いなのかを皆で考えてみよう」と授業で取り上げ、生徒と一緒にじっくりと画像の観察を行います。すぐには気が付かない生徒でも、時間を取って冷静に観察すると「何がどう嘘なのか」を自分自身で見つけることができます。答えが出ない場合には、画像を見分けるヒントを出すなどして、楽しみながら、自然にリテラシーを身に付けられるように教えています。