日本と中国の関係には2000年の歴史がある。日本は遣隋使など、中国に人材を送って、中国の最新制度や文化を導入してきた。一方で、日本と米国はペリーが黒船で浦賀沖に来てから170年しか経っていない。
長い歴史を踏まえて、今の日中関係を見れば、異常さがわかる。「米中貿易戦争」では、中国を理解しない米国に追従し、トランプ前大統領に物申すことがなかった。1980年代に「日米貿易摩擦」を経験した日本が、米国と中国との関係づくりの橋渡しをする立場にあったと思う。Quadの中国包囲網などそもそも見当違いなのだ。
自民党で親中派の政治家といえば、72年に日中国交正常化を果たした田中派の流れを汲む二階俊博元幹事長がいる。しかし二階氏の関係づくりは、15年の「3000人訪中団」のように基本的に“朝貢外交”で、現代では良いアプローチではない。
訪中したら侃々諤々と議論し、お互いの理解を深めないと、中国にとってもプラスにならない。米国に中国との良好な関係を促しながら、中国には日米貿易摩擦の教訓をシェアするといい。米国は対立すると徹底的に叩く悪いクセがあるとか、米国の怒りを鎮めながらこちらの言い分を意見するとか、現在の中国にドンピシャの貴重な経験があるのだ。
日本の“対話力不足”
次に韓国は、反日路線を進めた文在寅政権に対して、日本は「両国間の問題はすべて解決済み。決めたことを守れ、蒸し返すな」と突っぱねてきた。
たしかに65年の日韓請求権協定には、日本が5億ドルを経済協力することで財産・請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と明記してある。
しかし韓国の人に言わせれば、「元慰安婦が生きているうちに謝ってほしい。韓国はもう貧しくないから、おカネではなく気持ちだ」と言うのだ。元徴用工問題にしても「三菱重工などの資産を勝手に現金化するのはいけないことだとわかっている。でも、日本は話し合う態度を見せてほしい」と言いたいのだ。
韓国の人が感じるもどかしさは、日本の“対話力不足”からくる。話し合いを拒否して「蒸し返すな」と突っぱねる日本人の態度に不満なのだ。文在寅氏の責任も大きいが、彼が大統領の任期を終えた今、関係改善を検討してもいいのではないかと思う。
さて、ロシア問題も近隣外交の1つだ。私が知る限り、ロシア問題に最も詳しい政治家は森喜朗元首相だ。父の森茂喜氏は、長年「日ソ協会」の会長を務めて旧ソ連との交流を深めた政治家だった。親子二代のロシア通なのだ。
安倍元首相がプーチン大統領と27回も会談できたのも、同じ派閥の清和会の森氏のお膳立てがあったからだ。しかし安倍元首相が、プーチン大統領と会談するたびに北方四島の交渉は遠のいたし、日ロ平和条約の締結も失敗して、疎遠となっていった。