ノンアルコール市場は拡大している
こうした非飲酒者の増加に伴い、ノンアルコール飲料の市場規模が拡大している。
以前は、宴会の場で、飲めない・飲まない人は、緑茶やウーロン茶に選択肢が限定されていた。しかし最近は、ノンアルコールビールなどのノンアルコール飲料を飲むことができるようになった。
図表2は、サントリーが調査した、緑茶やウーロン茶以外のノンアルコール飲料の市場規模の推計である。ノンアルコールビールテイスト飲料では、キリン「キリンフリー」(2009年発売)が嚆矢となり、サントリー「オールフリー」(2010年発売)のヒットなどが、2009年から2012年にかけて市場規模を3倍に増やした。加えて、ノンアルコールのチューハイ・カクテルテイスト飲料も増えている。
ノンアルコールビールの製法は、味や品質に直結する。このため、ビールメーカーは製法の詳細を開示していない。ただし、アルコール度数がゼロということは、各社とも発酵工程はないと推測される。
これに対して、アサヒビールが最初に投入した微アルコール飲料「ビアリー」は、ビールを製造した後に、低温蒸留してアルコールを0.5パーセントまで除去する方法を採っている。このため、完全なノンアルコールビールよりも、ビールの味わいに近いものの、酒税法上はアルコール度数1パーセント未満なので、酒とは分類されない。
ノンアル飲料は飲酒者の代用品でしかない
では、なぜノンアルコール飲料が求められるのか。図表3はその理由を示している。飲用経験者全体では、「車を運転したいから」(25.8パーセント)がトップで、2位が「お酒を飲んだ雰囲気が味わえるから」(23.3パーセント)、月1回以上飲用者でトップは、「健康に気をつけたいから」(36.1パーセント)である。
筆者の考えでは、ノンアルコール飲料は、お酒を飲む人にとってのアルコールの代用品である。「車を運転したいから」や「お酒を飲んだ雰囲気が味わえるから」という回答がその証左である。お酒を飲めるのに、「飲めない事情」があってノンアルコール飲料を楽しんでいる。
逆にいえば、体質的にお酒を飲めない人にとって、ノンアルコール飲料はそもそも選択の範囲外と思われる。今でも、お酒の飲めない人の選択肢は、緑茶やウーロン茶であろう。人気マンガでテレビドラマ化もされている『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎を持ち出すまでもなく、筆者の交友範囲でも、お酒を飲めない人は、ほとんどが緑茶やウーロン茶を選ぶ。