さて、売り上げからポイント付与分を差し引かれてしまった前回(>>記事はこちら)登場のA君の悲劇についてだが、現行の日本基準では、商品の売り上げをそのままストレートに売上高と認識する一方で、付与したポイントに見合う商品やサービスの提供の義務を将来負うものと考え、その分の金額を「ポイント引当金」の形で負債として認識し、実際に使用された時点でその負債を減らしてきた。

ところがIFRSでは、そもそも売り手はポイント分について売り上げる気がなかったと考える。つまり図2にあるように、10万円の商品に15%のポイントを付けた場合、現行の日本基準では売り上げは10万円と認識するのだが、IFRSではポイント分の1万5000円を差し引いた8万5000円しか計上できない。そして、その1万5000円はいったん負債として計上しておき、そのポイントが利用された時点で、改めて売り上げへ振り分けられる。

「売り上げの一部が先送りになるだけの話ではあるが、ポイントを大量に発行する家電量販店、航空会社などは、IFRSを適用すると、物品販売時や役務提供時の売り上げは大きく減る」とあずさ監査法人の山邉道明パートナーは見る。売り上げ実績を人事評価の対象としている企業では、早めに人事部と事前調整しておいたほうがよさそうだ。

また、IFRSは収益の認識に際して「本人」「代理人」という考え方をとる。両者の違いは、顧客に対する財貨・役務の提供や、在庫リスクの負担の有無など。一言でいえば、経済的な重要なリスクを負うものが本人、負わないものが代理人になる。その代理人には、実際の取引で得られる手数料のみを売上高として純額表示することが求められる。

ということは、百貨店の売上高が大幅に減額されてしまう可能性が高い。なぜなら、仕入れたときはまだメーカーが商品を保有し、売れた時点で仕入れ代金を支払い、自らは在庫リスクを負わない取引をメーンに行っているからだ。手数料を計算するのにも単品ごとの管理が必要になり、そのコスト負担も懸念される。そこで、売り場そのものをメーカーなどに貸すような賃貸型にビジネスモデルを転換することが考えられる。