IFRSの導入によって、一人ひとりのビジネスマンの仕事ぶりに大きな影響を与えそうなものが「収益の認識」、つまりどの段階で売り上げを立てるかという基準が変わりそうなことである。これまで日本の国内企業は、商品を出荷した段階で売り上げを認識する「出荷基準」を採用することが多かった。

しかし、IFRSでは売り上げを認識する際には、(1)リスクと経済価値の移転、(2)継続的な管理上の関与などがない、(3)経済的便益が流入する可能性が高い、(4)信頼性を持って収益の測定が可能、(5)信頼性を持って原価の測定が可能―という五つの要件をすべて満たすことを求めている(図1参照)。この点について監査法人トーマツの牛山誠パートナーは次のように解説する。

「出荷した段階で商品の所有に伴う重要なリスクと経済的価値が買い手に移転したかというと、そうではない。輸送中に商品が破損するリスクや、不良品が混ざっていたら返品もある。買い手が届いた商品をチェックして『OK』となった段階で収益の認識を行う『検収基準』へ変更するケースが増えるだろう」

であれば、出荷時点で買い手にリスクと経済価値が移転したことを認めてもらう契約を結び直せばいいという理屈も成り立つ。しかし買い手のリスクが高くなる話で、そうは簡単にことは運ばない。

「そこで誰が取引先の検収結果を把握するかが問題になる。伝票のやり取りをするにしても、実務面の課題が出てくる」(トーマツ・桃木秀一パートナー)。

真っ先に候補にあがるのが、日頃取引先との接点を持っている営業マンだ。当然、彼らの負担は増える。また、よく見かける期末の“駆け込み営業”も、出荷から検収までの日数を見越して前倒ししていかないと、せっかくの売り上げが翌期に回って営業成績に反映されない恐れがあるので、注意しておきたい。