とはいえロシアの輸入はほぼ半減しているだけに、石油収入が増えても得られた外貨は活用できない。さらに、欧州は石油や天然ガスの脱ロシア化を急ピッチで進めている。

今のところ、欧州の大部分を襲うインフレの主因がエネルギー価格高騰であることから見ても、ロシアが対欧州エネルギー供給の支配によって影響力を保持していることが分かる。だが冬が近づき事態が深刻化すれば、おのずと劇的な脱ロシア化が進むだろう。

そんなわけで、段階的で動きは鈍いものの、ロシアでは兵士の給与支払いが滞り、故障した機械は部品不足で修理できず、電子システムには障害が発生し始める。

おそらく現状の制裁を強化する最も有望な方法は、エネルギーと金融分野でさらに踏み込んだ規制を行うことだ。

エネルギーでは、欧州諸国でロシアの石油と天然ガス禁輸を段階的に実施すること。関税引き上げにも同様の効果があり、税収を各国国民の生活支援に回すこともできる。

金融分野においては、まだ制裁を免れているロシア主要銀行やロシアに投資する欧米企業、ルーブル建て取引などを標的にすることもできる。

制裁が十分な速さで効いていないというなら、スピードアップすればよいのだ。

From Foreign Policy Magazine

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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