昔から、人事の仕事をしていると話すと、管理職について聞かれることが多い。一般的に言って、管理職とは課長以上、労働組合も脱退してマネージメントに専念する役職者だ(係長=主任までは組合員のケースが多い)。経営的な判断が要求されるわけではないものの、年収も一千万円を超え、幹部候補という扱いになる。
終身雇用型の単線型キャリアパスでは、社内の職位を挙げていくしか出世という道が無いため、管理職になれるかどうかが非常に大きな意味を持つ。簡単にいえば、ある年齢までに課長に上がれなかった時点で出世競争からは完全に脱落し、一時金を除けば、昇給も頭打ちとなってしまう。そこで今回は、管理職の決定プロセスや選抜基準について、まとめてみたい。(前編はこちら)
30代のうちが勝負
●出世しやすい部門はどこか
この手の議論では、長期の出世と短期の出世がごちゃまぜになっているケースが多い。両者はまったく違うので分けて考えるべき。一般的に、数字をとってくる営業部門はどこでも強く、メーカーであれば開発部門も同様に大きな影響力を持つ。よって、こういった部門に入ることは「長期的には取締役以上に出世しやすい」と言える。
逆に、人事や財務経理、総務といった管理部門は社内影響力は弱く、こういった部門から経営陣入りするケースは多くない。東電やJALのように管理部門=出世コースという企業もあるにはあるが、どちらも政府とのパイプが重要という特殊な企業だ。筆者の知る限り、人事部の権力が強い会社は存在しない。
ただし、短期だと話は別だ。一般論だが、営業やSE、開発系よりも、管理部門はポストが多く、比較的部課長レベルには出世しやすい。これは事業所、グループ企業ごとに管理部門ポストがあり、いくらでも本社で余った人材を回せるからだ。
なので、優秀な人間を営業部門に配属し、あんまりぱっとしない人を間接部門に配属しているけれども、20年たってみると後者の方が給料が高くなっていたという話は大手企業ではよく聞く。
●管理職になる上で最も重要なことは?
ズバリ、年齢である。というと「身も蓋もないことを……」と思われるかもしれないが、日本型雇用というのはそういうものなので仕方が無い。ちなみに、管理職昇格には各社でレンジがあって、その中にいる間にしか原則、昇格はできない。一般的に35~45歳あたりだが、徐々に低下している(つまり、必要に迫られて脱年功序列しつつあるということ)。
90年代は40代前半で課長になるのが普通だった。だがここ10年ほどで電機や自動車といった国際競争の激しい大手製造業では30代での幹部候補選抜が一般化しつつある。そして、もちろんこれは一般従業員向けには公開されてはいない内々規だが、人事部が「40歳以上は原則、管理職に登用しない」という制度を作っている企業が少なくない。企業にもよるが、30代が事実上の幹部候補選抜期間だということは覚えておいた方がいい。