無職、年金加入者、非正規雇用が多く集まる保険

国保は加入者の平均年齢が高いこと、それに加えて「所得の低い人」が多く加入していることが、結果的に保険料を押し上げている。かつては加入者の7割が自営業者と農林水産業者だったが、次第にその割合が減少し、現在は国保加入者で「所得なし」の割合が約3割、所得100万円未満が半数を占める。

当然ながら、所得に応じた保険料(所得割)だけでは医療費をカバーできない。

「ですから国保には世帯人数に比例して保険料が高くなる『均等割』、国保に加入する全世帯が平等に負担する『平等割』があるのです」(寺内氏)

特に均等割は、家族が多いほど、子どもが多いほど損な制度だ。例えば世帯主の夫がいて、妻、子どもがいれば、3人分の均等割が発生してしまうのである。住まいの地域によって金額に多少の差はあるが、例えば大阪府大阪市在住で現役40代夫婦と未成年の子ども2人(小・中学生)の4人世帯で世帯所得が300万円の場合、国保料は年間58万円と試算されている。所得の19%だ。国保加入者以外の人は、自身の所得の19%が健康保険料としてもっていかれることを想像してほしい。

「国保は今や無職の人、年金加入者、非正規雇用の人々が多く集まる保険になりました。所得が低い人たちで、かつ年齢が高くて病気を発症するリスクが高い、つまり医療費がかかる集まり。このメンバーでがんばりなさいといわれても……加入者にとって過重な国保料です」(長友氏)

まるまる一冊分の原稿料が国保料に消えていく

都内に住む私は、国民健康保険を扱う近くの窓口をたずねた。国民健康保険の決定通知書を見せ、今年も現状維持の収入となりそうだが、この状態で減額の措置はあるかとたずねると、区の職員は首を横にふる。

「ありません。通常、国保料の減免は直近3カ月の収入や家賃の金額などトータルで判定しますが、生活保護を受けられるかどうかというほど困窮している世帯が対象になります。コロナ禍でも前年より30%の収入が減っていることになれば、減免措置が受けられますが……」

私は納得がいかなかった。毎年一冊、本を出版しているが、そのまるまる一冊分の原稿料が国保料に消えていくのだ。その思いを伝えると区の職員は同情をこめてうなずく。

「以前は住民税と同じようにお支払いになった生命保険などを差し引き、ひとり親控除なども行った所得に対し、国保料を算定していました。しかしそうなると、ご家族の多い方が優位になってしまうという考えから、現在は“基礎控除のみを行った所得”で国保料を計算しています」