「男性相談窓口」の必要性を指摘
さらに、60歳以上の単身世帯の男性では、近所の人とのつきあいが「あいさつをする程度」が半数以上で、「つきあいはほとんどない」とする割合も高いことがわかりました。自殺要因に「孤独感」がある者も女性より男性のほうが多く、20代〜80代以上の各年齢層で、おおむね同じぐらいの人数になっています。
こうした調査結果から、白書は男性が地域社会で孤独・孤立に陥るリスクが増大していると結論づけています。そして、地方自治体などで男性相談窓口を整備していくことが重要だと提言しました。白書が、こうした「男性の孤独感」に踏み込んだのは、とても意義のあることだと思います。
性別分業が男性にもたらす不利益
近年はジェンダー平等が盛んに議論されています。それ自体はいいことなのですが、議論の中心はどうしても、女性がどんな不利益を被っているか、それを解消するにはどうすべきかといった点に絞られがちです。
私は、ジェンダー平等を阻んでいる障壁の中でいちばん問題視されるべきなのは「性別分業」だと思っています。これが男女間の賃金格差や地位の格差を生み、ライフスタイルにおける女性の選択肢も狭めてきました。
しかし、性別分業によって不利益を被っているのは女性だけではありません。男性もまた違う不利益を被っており、そのひとつが「孤独感」なのです。
男性は、仕事と家族以外の交友関係が女性より少ないと言われています。働いていて家族がいれば、仕事上のつきあいや家族との交流があります。しかし、定年を迎えて、しかも子が巣立って配偶者までいなくなると、とたんに孤立してしまう男性が少なくありません。
一般的に、女性は地域との交流や子どもの学校を通した交流などがあり、それを維持するのも男性に比べて得意だといえます。近所の人と、立ち話や世間話などを通じて交友関係を積み重ねていく人も多くいます。こうした関係は仕事や配偶者を失った後も続くので、それゆえ女性は年を取っても孤独を感じにくいのではないかと思われます。