英検1級がバタバタ落ちる大学入試以上の中身

渋ズは、いずれも「自調自考」を建学の精神に掲げ、東大合格者数上位にランクインする進学校であると同時に、ハーバードやMITといった海外名門大学への合格実績も目覚ましいグローバルスクールの先駆者的存在である。

英語圏の現地校や海外のインターナショナルスクールで同学年のネイティブ以上の英語力を身に付けた帰国生トップ層にとって、「東大も海外大もどちらも狙える」というのが、最大の魅力らしい。

実際に両校とも、例年各30人ほど帰国生の中から、毎年コンスタントに東大合格者と海外大合格者を輩出している。渋渋の最新の説明会資料では、東大・海外大W合格者が複数いることも報告された。

入学後は、帰国生にも一般入試を勝ち抜いてきた受験生と同等の高い学力を求める両校だが、帰国入試科目は、英語のみだ。渋幕は英語の筆記試験と面接、一方の渋渋は英語・国語・算数の筆記試験とグループディスカッション(英語)が課されるが、国算の得点は参考程度と目されている。両校とも特に英語のエッセー(小論文)を最重要視していて、英語を使って論理的に思考する能力や人物像を測ると共に、国語や算数など他教科も含む総合的な学力の判断材料にしていると言われている。

どんなテーマのエッセーなのか。

・文学においてドッペルゲンガーのモチーフはなぜ人気なのか?(2020年)
・社会階層は存在しているのか? 格差社会は解消できるのか?(2021年)
・国家や民間企業が月や火星に領土を保有することの是非 (2022年)
火星の3Dレンダリング画像
写真=iStock.com/Cobalt88
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これらは、渋渋で実際に出題されたエッセーテーマだが、例年、幅広い分野の知識や経験に基づいたアウトプットが要求されている。大人でも回答に窮するようなテーマを、しかも英語で記述する。

渋渋ではこれに加えて毎年、シェイクスピアやウィリアム・ブレイクなど中世から近世にかけての詩を読ませてその解釈を記述する問題も出る。現代英語とは異なる古典英語の知識やその時代の歴史的背景を理解していなければ、高得点は望めない。

いずれもB4の解答用紙を各1枚びっしり埋める必要がある。60分の試験時間でリスニングやリーディング、文法、ボキャブラリーに加えて、これら2つのエッセーが課せられているのだから、相当にハイレベルであることは間違いない。

英語入試で渋ズに次ぐ人気と難易度で多くの受験生を集めるのが広尾学園だ。同校の入試では、TOEFL(120点満点)による優遇制度の基準スコアを中学受験で90、高校受験で100に設定。中学入試の合格者の実力はTOEFL100レベルと言われている。ハーバードなどのトップ大学受験に必要とされるスコアの目安が100であることを考えると、帰国子女の小学生のレベルがいかに高いかが分かるだろう。