食べ手側が食卓を多様化させることが重要
一方で、小麦価格高騰から、国産小麦や米粉を見直す動きも出ており、消費や流通現場からの多様化は少しずつ進んでいると言えます。
ここで大切なのは、食べ手の側がこうした多様化の背景を毎日の食卓の中で考えていくことです。これまで通りの食文化にこだわることが食料危機を深刻化させてしまう可能性があります。危機をきっかけに食卓の向こう側を知って、輸入に依存してきた食材から国産への転換を行っていくことが選択肢として求められるのです。
パン食を例にとると、これまでは輸入小麦を中心としたパンが主流を占め、日本人はふっくらとした柔らかいパンに慣れ親しんできました。国産小麦はタンパク質が少なく、米粉はグルテンが含まれないため、パンにすると輸入小麦のような食感が出せないのです。
ですが、最近では小麦の品種改良が重ねられ、パン用の強力粉に向く硬質小麦の品種の生産も増えてきています。また米粉は、パン向けには独特のもっちり感が出るため消費は伸びてきませんでしたが、グルテンを追加してパン用米粉として販売したり、逆にグルテンフリーの需要が増えたことから販売額を伸ばしています。その結果、外国産小麦高騰の中で米粉を導入するパンメーカーも増えています。
食べ手はそうした時代の転換を食卓から対応していくことが必要になっていると感じます。歴史の時計は元に戻せない中で、現在の世界の食料事情から毎日の食卓を考えることが今まで以上に重要になっているといえるでしょう。