子供でも気持ち悪い虫と判断する

昆虫館のイベントで、マダガスカルゴキブリに触れるコーナーを設けたときのこと。

ふれあいに参加した男の子が、ゴキブリを手に乗せながら「これなに?」と尋ねてきました。マダガスカルゴキブリは翅がなく、動きも鈍く、家に出るゴキブリとはあまり似ていません。

そのため、なんの虫だかわからずに触っていたのです。私が「マダガスカルゴキブリだよ」と教えると、その子は「わ!」と悲鳴を上げてゴキブリを手から放しました。さっきまではそうでなかったのに、ゴキブリだとわかったとたんに気持ち悪く感じたようです。

もし「カブトムシだよ」とでも教えていれば、そのまま触り続けていたかもしれません。いわゆる「ゴキブリ」の見た目や動き方をしておらず、家で出会ったわけでもないのに、ゴキブリというだけで嫌がる。マダガスカルゴキブリへのこうした反応を見ると、ゴキブリは、彼らの性質以上に嫌われてしまっていることがわかります。

私たちは子どものころから、大人がゴキブリを怖がったり、気持ち悪がったりしている姿を目にします。周囲の反応を見るうちに、ゴキブリをよく知らないうちから嫌なものだと感じるようになった人も多いのではないでしょうか。

また、ゴキブリ対策用品のパッケージやCMなどでも、ゴキブリは不気味な害虫として表現されます。もちろん害虫対策は欠かせませんが、頻繁に目にしていれば、「ゴキブリ=悪いもの」と思うのは当然かもしれません。こうした環境の中で、ゴキブリへの恐ろしいイメージはどんどん育っていきます。

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写真提供=イースト・プレス
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「頭を落としても死なないんですよね?」

普通の生き物とかけ離れた能力があると思っている人も多いようで、「ゴキブリは人間が絶滅した後も生き残るって本当ですか?」「ゴキブリって頭を落としても死なないんですよね?」といった質問もよく受けます。

人類絶滅後に生き残るかどうかはどんな生き物も条件によるでしょうし、ゴキブリだって頭を落とせばそのうち死んでしまいます。(体の仕組みが人間と違うため、頭を切っても動きます。ただ、ほかの虫も動くので、ゴキブリに限った話ではありません)

ゴキブリはなぜ嫌われるのか。その答えは、簡単には出せません。純粋にゴキブリの性質が嫌われているのではなく、「誰もが嫌がるもの」「害虫」「恐ろしいもの」というイメージが絡み合って、大きな嫌悪感となっているからです。

だからこそ、嫌っている人自身も「嫌い」という感情がどこかはっきりせず、「ゴキブリはなぜ嫌われるのか」なんて疑問を抱くのでしょう。

もしゴキブリのことが苦手なのであれば、ぜひとも「なぜ嫌いなのか」を考えてみてほしいと思います。

頭の中で、実際以上に嫌悪感を膨らませてはいないでしょうか?

イメージの中のゴキブリではない、ありのままのゴキブリを見つめてみると、彼らと付き合っていく光明が見えるかもしれません。