意外と多い「予想外に長生きするケース」

老人ホームの方にお話を聞くと、富さんのように自分や家族が予想外に長生きするケースは非常に多く、途中で資金がショートすることもまま起こるそう。その時皆さん口にされるのが、「こんなに生きるとは思わなかった」。

もちろん施設側も、資金がなくなったからといって急に追い出すようなことはしません。おおむね1~3カ月の猶予をくれるので、たいていは、親族の誰かが不足分を肩代わりするといいます。

ただ富さんの場合、彼女自身には担保にできる家や資産はなく、妹の喜久子さんにも資金力がなく助けることが困難だったため、結果的に生活保護の申請になりました。これによって医療費や介護保険の保険料がかからず、住宅費用の補助も受けられるので、本当に助かったと仰っていました。

富さんと喜久子さん姉妹の例から学べるのは、やはり資金を長めに考えておく、ということに尽きるでしょう。といって、「人生の終盤を狭いところで過ごさせるのは不憫で」と家族が感じるのも当然だと思います。

私もいくつかの老人ホームは見て回ったことがありますが、値段と環境は見事にリンクしています。月20万円以上出せば空間にゆとりがでてきますが、ランクが下がればうなぎの寝床のような部屋のことも。キッチンがあって、すてきなインテリアで、というようなハイグレードな施設を先に見てしまうと、ランクを下げるのはかなり苦しい決断になるだろうなと、個人的にも感じた記憶があります。

現役世代は「非課税の投資」で備える

では、我々現役世代が同じ轍を踏まないためにはどうすればいいのか。今できることをお伝えしていきたいと思います。

まずおすすめしたいのは、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAといった非課税の投資です。

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写真=iStock.com/Yusuke Ide
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私的年金制度として知られるiDeCoは、2022年5月に、大きく制度が改正されます。中でもポイントとなるのは、加入可能年齢の拡大。これまで60歳までだった加入可能年齢が、原則65歳まで拡大されます。国民年金に加入していることが条件で、60歳以降も会社員や公務員として働き続ける方は、老後資産の積み増しが期待できます。

一方、基本的に60歳までしか国民年金に加入できない自営業の方やフリーランスの方もチャンスはあります。国民年金を40年間満額で払っていない方は、60歳から65歳までの間に任意加入が可能です。その場合はiDeCoにも加入できますので、ぜひご確認を。