ユーロ圏の危機で格付会社が注目を浴びている。去る4月、国債の償還資金調達の目処が立たなくなったギリシャ政府に対し、EUとIMF(国際通貨基金)が総額で450億ユーロに上る金融支援を決めた。ところが、その4日後に米系格付会社のスタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャ国債の格付けを、投資適格のBBB+(トリプルBプラス)から、投機的等級(投資不適格)のBB+(ダブルBプラス)に格下げしたため、危機が一気に拡大し、通貨ユーロが売り浴びせられた。さらにS&Pがスペインとポルトガルも格下げしたため、危機の拡大と深刻化が懸念される事態になった。

不況に陥ったギリシャ政府に抗議活動をする労働者たち。(写真=PANA)

不況に陥ったギリシャ政府に抗議活動をする労働者たち。(写真=PANA)

これほどの影響力を持つ格付けとは何なのか? かつてムーディーズ・ジャパンの代表理事、角谷優氏は、ある雑誌のインタビューで「格付けとは、科学的なものでもなければ、公明正大なものでもありません。これはあくまで格付機関の意見、つまりアナリストの意見でしかないのです」と述べている。この言葉は格付けの本質を見事にいい表している。ムーディーズやS&Pは過去何度となく、彼らの間違った格付けを信じて損をした投資家から訴えられてきたが、訴訟にはことごとく勝っている。格付けは単なる意見の表明にすぎず、たとえそれが間違っていても、合衆国憲法修正第一条で保障された言論の自由の範囲内であるというのが判決理由である。

(写真=PANA)