宇宙飛行士は普段何をしているのか

日本で宇宙飛行士という職業が誕生したのは、1985年。毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さんの3人が1期生として採用された。7年後には2期生・若田光一さん、さらに4年後に3期生の野口さんが続く。野口さんの後も複数の飛行士が採用され、これまでにJAXAでは11人の飛行士が誕生した。現在は、13年ぶりに6期生の選抜を進めており、来年春に若干名を採用する予定だ。

宇宙から帰還後、にっこり笑って手を振る姿が印象的な宇宙飛行士だが、そもそもどんな仕事をしているのだろうか。

国際宇宙ステーション(ISS)に滞在して、世界の科学者から託された各種の宇宙実験をする。老朽化が進むISSの補修・修理をする。ISSが完成する前は建設作業も担った。飛行していない時も、能力維持のために地上で訓練を繰り返す。

こうした表向きの活動だけではなく、テレビなどでは見えないところでも仕事を重ねている。

例えば飛行機会獲得のための「営業活動」。日本には、人を乗せるロケットも宇宙船もない。このため宇宙飛行はNASA(米航空宇宙局)頼りになっている。NASAから「一緒に仕事をしたい」と、思ってもらわないことには、声がかからない。コミュ力(コミュニケーション力)がとても重要だ。飛行士たちは、仕事の時だけでなく、パーティーなどにもこまめに顔を出し、自らをアピールする。

給与はJAXA職員と同じ、講演料もタダ

日本国内では、品行方正の優等生であることや、いつも笑顔で人に接することなど、宇宙のプラスイメージを伝える広告塔の役割も求められる。宇宙飛行後に政治家や官庁幹部にあいさつ回りを欠かさないのはもちろん、政治家たちのさまざまな会合にも呼ばれる。政治家たちには、宇宙飛行士好きの人が多い。政治家一人ひとりとのツーショット撮影が求められ、それにも笑顔で応じる。

こうしたさまざまな仕事をこなしているのだから、さぞや高収入なのかと思うが、そうでもない。

飛行士の待遇は、基本的に大卒、大学院卒のJAXA職員と同じだ。30歳で本給約32万円、35歳で約36万円、これに各種手当がつく。飛行士には、さらに「宇宙飛行士手当」もつく。飛行が決まってから、帰還までは手当の額も増える。

ただ、飛行士たちは理工系の大学院を修了していたり、医師としてのキャリアを持っていたりするエリートだ。それを考えれば、ずば抜けて高い給与水準とはいえない。

講演など、さまざまなイベントにも引っ張りだこではあるが、JAXAの仕事として受けた場合、謝礼を受け取ることはできない。