このため採算が合わなくなると生産を海外に移管せざるを得ず、国内にとどまったケースでも、十分な収益を確保できていない状況が推察される。これではいくら輸出の自国産比率が高くても円安のメリットを得ることはできない。日本電産やファナックといった好収益企業はむしろ例外と考えたほうがよいだろう。

要するに日本企業が提供する製品の付加価値が低いことが最大の原因であり、これが解消されない限り、事態は改善しない。日本企業におけるITなどの資本装備率は諸外国と比較して低く、日本企業はむしろ労働集約型になっている。安価な労働力と円安に頼るビジネスを続けていると、コストしか差別化要因のない低付加価値製品ばかりを製造する、いわゆる途上国型経済に転落してしまう。

今回の円安は日本の低付加価値な産業構造を変える最後のチャンスかもしれない。ここで思い切った決断ができなければ、状況はさらに悪化する可能性が高い。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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