SDGsの達成には何が必要なのか。スポーツドクターの辻秀一さんは「今直面している格差問題や環境問題は『大きくなる』『高くなる』『上になる』などの認知的思考の暴走から生じています。地球とともに私たち人類が悲鳴を上げている状況と言っていいでしょう。比べることや評価の軸だけでなく、存在感を軸に一人ひとりが自分を大事に生きる社会がやってくれば、次世代の未来はきっともっと明るいに違いありません」という――。

※本稿は、辻秀一『自己肯定感ハラスメント』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

デジタルトランスフォーメーションのボタンを押そうとしている指先
写真=iStock.com/Olivier Le Moal
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「DX」とともに必要な、もう一つの変革

今の世界に広がる社会課題は、自己肯定感を高めようとする認知脳の暴走によってもたらされたものばかりだと私は考えています。肯定感を高めるために、優劣の優を追い求め、発展と途上では発展を追求し、不便より便利、下より上を得ようとしてきたことが、さまざまな問題を引き起こしてきたのです。

それが格差問題であり、環境問題であり、疾病問題です。「大きくなる」「高くなる」「上になる」などの認知的思考に、地球とともに私たち人類が悲鳴を上げている状況と言っていいでしょう。

比べることや評価の軸だけでなく、存在感を軸に一人ひとりが自分を大事にして、機嫌良く、家族や組織や社会や国を愛して、内側にある思いや目的で生きる社会がやってくれば、次世代の未来はきっともっと明るいに違いありません。

それは、私たち一人ひとりのちょっとした脳の使い方の変革でやってくる世界です。デジタル・トランスフォーメ―ション(DX)が叫ばれています。デジタルを利用した新しい世界への変革です。しかし同時に、「BX」も今これからの時代に必須だと声を大にしてお伝えしたいところです。

非認知脳を磨く「BX」のススメ

「BX」とは、ブレイン・トランスフォーメーション、脳の変革です。これまで認知脳の暴走で現代文明を築いてきた今、その限界に人々がぶち当たっています。その知らせが今起こっているさまざまな社会問題だと言えるでしょう。

世界は社会がつくっています。社会は組織やシステムでできています。組織やシステムは人でできています。そして、人は脳で動いています。

ということは、今の世界は脳の表現であり、脳の作品です。認知脳しか働かせずに行きついた世界が今の社会なのです。

「自己肯定感を高めて満足する」という認知的思考のみでは、限界や課題が多々あります。それを否定しているのではなく、自分と向き合い自身の“ある”を大切にし、まず心を整えて生きるための非認知的脳をもっと磨いていこうという「BX」を推奨します。