ニトムズの粘着クリーナー「コロコロ」は業界トップシェアを誇る製品だ。他社より高めな価格にもかかわらず、シェア50%をキープしている。強さの秘訣は何か、そもそもなぜコロコロは誕生したのか。ニトムズコンシューマ事業部門の和田幸洋さんに話を聞いた――。
ニトムズの和田幸洋さん
筆者撮影
ニトムズコンシューマ事業部門 事業企画部 課長 COLOCOLO担当の和田幸洋さん

誕生のきっかけは「ゴキ逮捕!」の在庫の山

ニトムズは、日東電工の消費財事業を担う子会社として1975年に設立された。粘着技術をコアに、一般消費者の豊かな暮らしに貢献するべく、いろいろな粘着製品を販売してきた。

しかし、「コロコロ」が誕生するまでの8年間はヒット製品に恵まれなかったという。

和田さんは当時の状況についてこう振り返る。

「開発担当がさまざまなアイデアを形にしては失敗することの繰り返しでした。企画段階でボツになることもあれば、試作品としてテスト販売するも、お客様の支持を得られずに撤退することもありました」

こうしたなか、あるきっかけが思いも寄らぬアイデアにつながっていく。

それが、粘着技術を応用した「ゴキ逮捕!」(1978年発売)の在庫だった。「ゴキ逮捕!」は強い粘着力を生かし、ハエ叩きのようにゴキブリを捕獲する製品だったが、販売が全く振るわなかったという。

在庫だけがたまっていき、いつしか倉庫には「ゴキ逮捕!」の山が無情にも積み上がる状態になってしまったそうだ。

そんなある日、在庫を整理していた女性社員が、粘着テープの粘着面を表にした状態で衣類についたほこりを取っていた。この様子を開発担当者が見かけ、「粘着テープでゴミを取る掃除用具を出せば売れるのでは」と直感的にひらめいたという。

これを機に「コロコロ」の製品開発が始まったのだ。

「コロコロ」を開発するきっかけとなった「ゴキ逮捕!」
筆者撮影
「コロコロ」を開発するきっかけとなった「ゴキ逮捕!」

開発には5年の歳月を費やした

だが、同社では粘着テープからゴミを取る製品を今まで作ったことがなかった。和田さんは、開発で苦労した点を次のように説明する。

「製品化するまでの課題として、まず粘着剤の加減を調整するのが難しかったことが挙げられます。強くするとクリーナーが転がらず、カーペットにもくっついてしまう。反対に弱くすると、今度はゴミが取れなくなってしまう。粘着剤の配合と厚みを絶妙なバランスにするのに苦労しました。

また、カーペットには凸凹面があります。普通にクリーナーを転がしても表面だけのゴミしか取れず、カーペットの奥に入り込んだほこりや髪の毛までは取れないのです。こうした課題を乗り越えるため、試行錯誤を繰り返し、実用性のある製品に仕上げるまでに5年の歳月を費やしました」

ニトムズにとっては、今まで世に出したことのない画期的な製品アイデアだった。そのため、大量生産できる製品設計や生産技術の構築にかなりの時間をつぎ込んだという。

特に、粘着テープののりを平面上ではなくすじ状に塗る「すじ塗り加工」技術を確立させるまでには多くの試作品を作って試行錯誤を重ねた。

こうした多くの苦労を乗り越え、1983年に満を持して発売にこぎつけたのである。