おそらく2021年の合計特殊出生率1.30はコロナによる特殊要因で下がった数字だろうと予測されますが、仮にこれが2014年ごろの1.40台まで出生率が回復するとしても、前述の通り絶対的な母親数(出産適齢期の若い女性)が減っていく以上、いまの人口を維持することなどもはや困難です。もうすぐ団塊の世代がごっそり後期高齢者になって病気になりがちになった結果、いますでに苦しい日本の社会保障費をもっと食うことになりますが、この年代が亡くなっていくのに見合う子供をいまの出産適齢期の女性が同数子供を産むためには出生率は5.8から6.1ぐらい必要になります。無理やがな。

税負担と家庭の天秤は税負担に振り切れている
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必要なのは地方創生ではない

ところが、確かに人口減少局面にあり出生数の減少に歯止めがかからない現状のなか、世界に目を転じてみると相対的に日本は少子化対策には成功しつつある国の部類に入るかもしれません。

というのも、日本が位置する東アジアは総じて合計特殊出生率の低迷が顕著になっており、しかも、景気の低迷が出生率の低下を促す一方、子育て支援や学費無料などの「生まれた後の子供」に対して政府支出を増やしても出生率は上がらないことは政策分野ではすでに常識になっています。

東アジアの主要国で見ていくと、台湾が1.07、香港1.05、韓国が1を割る0.92、シンガポールは1.12と、軒並み大幅に下落したのに加え、最近では中国が人口統計の再整理をしたこともあってどうやら最新2021年の出生率は1.30と日本を下回ったようだと見られています。

要は、コロナによる人口減少は世界的なトレンドであり、特に東アジアでは人口の抑制がかなり進んでしまい少子高齢化が日本以上に深刻になる可能性が高く、インドやモンゴルなど一部の国以外は急激に人口減少と高齢化が進み始めていることを示唆します。余剰人口を外国に出して出稼ぎをするメカニズムは今後どんどん落ち込んでいくと、今度は移民に来てもらって人口を支えるという政策目標は不可能になる恐れもあります。

多くの識者が指摘するように「人口減少を前提とした社会保障や人口政策を採るべき」となれば、必然的に、消滅する自治体や地方の産業の再編、使わなくなる護岸や電力・水道などのインフラの撤去、医師不在の地域の策定など、すべての国土に等しく日本人が住んでいる前提となっている制度の大幅な変更は余儀なくされます。

デジタル田園都市が目指すべきものは、地方創生のような人が住まなくなり文化的な生活ができなくなる地域にカンフル剤を打つことではなく、残された人たちがきちんと集住し、医療、教育、働き口、文化的活動などが保てる人口の規模を保った都市を再整備することに尽きます。