与野党ともに少子化対策に乗り出してはいるが…

さすがにこれではまずいでしょうということで、自民党も対策に乗り出しそれなりにちゃんとした少子化対策の政策パッケージを発表していました。その中に、AI(人工知能)でお見合いマッチングするという、有識者が知ったら椅子から落ちる類いの政策も大真面目に政策検討項目に挙げられているのは、ひとえに「他に方法がないから」でしょう。

野党・立憲民主党も、城井崇さんらを中心に充実した出生・子育てプランを提示しており、相応に議論としては煮詰まっていて、あとはやるだけなんじゃないのというレベルのところまで来てはいるのではないかと思っています。

「じゃあなんでうまくいかねえんだよ」という話になるのですが、元に戻って「若い男女の出会いがないよ(結婚できないよ)」とか「女性が地方から出ていくよ」といった、政府や自治体が政策で押しとどめることがむつかしい個人の自由、尊厳のところに思い切り立ち入るからだと言えます。

また、あまり語られないこととして、男性女性の生涯未婚率に違いがあることも問題をより面倒くさくしています。生涯未婚率(2020年)は男性25.7%女性14.9%とされ、総務省が出す不詳補完値ではもう少し数字が上がります。

稼げない男性は子供を残さず死んでいくしかない

どうして男女に差が出るのでしょう。男性はバツイチからの再婚率が高く、バツイチ男×初婚女の組み合わせが多いということが原因とされる一方、再婚後の女性の出生率は初婚の女性に比べてやや低くなる傾向があります。出生の観点だけで見れば、稼ぎのある男性が女性と結婚し子供を2人以上産み、その後離婚して養育費を払いながら別の若い女性と結婚して子供を2人以上産む、という「時間差一夫多妻」がそれなりの数がいるからこそ、統計で目に見える形で男女の生涯未婚率に差が出ると言えます。

逆に言えば、稼げない男性は子供を残さず死んでいきます。職場や、地域や、同窓会などが男女の出会いを設けていた頃は、若い頃は稼げなくても結婚できる女性を見つけて家庭を築くなかで徐々に稼げるようになっていくプロセスはあったかもしれません。

しかし、職場で飲み会が「煩わしいこと」となり、女性が地元を捨てて都会で仕事を始めると、経済的に苦しい地域で暮らす男性はカネも稼げず結婚でもできず、生涯独身となってしまいます。それで社会的にいいのか、というのは問い直されなければなりません。

また、統計探偵の本川裕さんも指摘していますが、コロナによって予定していた婚姻が11万件ほど消失する一方で結婚・同棲を求める傾向が強くなり、感染症やそれに伴う景気低迷・経済上の不安から家庭を持つ志向へとほんのり変わってきたことで婚姻数は増大に向かうのではないかとも見られています。

コロナ禍での挙式
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