商品を売り伸ばすにはなにが大事なのか。渡辺酒造店(岐阜県飛騨市)の9代目・渡邉久憲さんは、経営危機にあった実家を、独自の「エンタメ化経営」で再建した。「蔵元の隠し酒」「非売品の酒」「杜氏のまかない酒」といった刺激的なネーミングはどこから生まれたのか。著書『日本酒がワインを超える日』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を紹介する――。
テーブルの上に米と耳を入れ冷たい酒
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杜氏やベテラン社員がいなくなり、社員は次々とうつに

酒類販売業免許の規制緩和が起こって他のエリアでは量販店が進出し、安売りが横行していました。それは業界新聞などのさまざまな媒体で情報としてすでに流れていたんです。いずれはこの飛騨エリアにも波が襲ってくるかもしれない。いや、必ずやってくる。他のエリアで行われていることがこの飛騨エリアで行われない理由がないんですから。

専務になってからの2年間も手をこまねいているうちに減収減益が続きました。売上が2億6000万円台に落ち込んだ2002年にはもう限界を感じており、これで廃業か……というところまで追い込まれました。