【本郷】ただ衰退する歴史学を復活させるためにも、そうした層にも歴史の面白さを届けなければ、という気もします。難しいところですね。

【深井】こちらの意図を理解した上で反論してくれるなら、有益なやり取りができると思うのですが、なかなかうまくいきません。

『歴史思考』の著者・深井さん
撮影=遠藤素子
歴史思考』(ダイヤモンド社)の著者・深井龍之介さん

歴史は、現代人の悩みを吹き飛ばす貴重なデータになる

【本郷】それでも深井さんは、実生活やビジネスに役立つ歴史や、歴史の面白さをたくさんの人に届けようとしているでしょう。

深井龍之介『歴史思考』(ダイヤモンド社)
深井龍之介『歴史思考』(ダイヤモンド社)

【深井】歴史を学べば、悩みを抱えて今を生きる人も楽に生きられるようになりますからね。データはすでに蓄積されているんです。過去3000年くらいの人類の活動から何も学べないはずがない。自分とはなにか、他者とはなにか、社会とはなにか、自分が所属する組織とはどんな存在なのか……。人類の歴史がその答えを明らかにしてくれています。

孔子や、イエス・キリストも今では偉人ですが、生きている時はあまりうまくいっていませんでした。ただ、世間に迎合せず自分を貫いたことで彼らの「言葉」が今に残りました。

「自分の道を貫けばいい」と言いたいわけではありません。短期的なスパンで人の評価を決めつけないほうがいい。今人生がうまくいっていない人も、落ち込む必要はないと思えるようになるはずです。

こうした歴史を知るか、知らないかで生き方や考え方が大きく変わる。歴史を学ぶ人が増えれば、社会もよりよくなると思うんです。

(構成=ノンフィクションライター・山川徹)
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