教員らは留学生の劣等感を取り除くために知恵を絞った

オリエンテーションの実施に関わったミルズ大学の教員らは、アメリカ軍による統治の、沖縄の若者への影響を推測し、留学生らの劣等感を取り除き、自信を獲得することが重要であると考えていた。

国旗・実業家
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問題の解決策として、大学の教授が沖縄とアメリカの学生を一緒に自宅に招待し、アメリカ人と友好な関係が築けるように促すべきであると提案された。さらに、沖縄の学生はキャンパス内で過ごすことが多いため、同世代のアメリカ人のジュニアカウンセラーを雇い、沖縄とアメリカの学生の溝を埋めることも提案されていた。

これらの史料からは、沖縄の留学生に対するオリエンテーションが徹底されていたことが分かる。「良きアメリカ市民」としての振る舞いができる留学生の存在は、アメリカ市民の沖縄統治に対する理解を得ることにもつながるからだ。

「占領者」と「被占領者」というイメージを払拭

アメリカ研究者のナオコ・シブサワは、戦後のアメリカにおいて、敵国であった日本と同盟国としての新たな関係を築くためには、戦時中の日本に対するネガティブなイメージを取り除く必要があったことを論じた。日本(人)のイメージを女性化し幼児化することで、アメリカの指導と支援を必要とする従順な日本人像を構築し、世界秩序のリーダーとしてのアメリカの自画像を再形成したのである。

E.W.サイードは著書『オリエンタリズム』において、西洋が東洋を「他者」として二項対立の中で想像することで西洋の優越的な自己を確認し、東洋の植民地化を正当化してきたと論じた。

そのようなオリエンタリズムの眼差しは、沖縄からの留学生にも向けられた。アメリカの庇護の下で育成される民主主義の推進を担う従順な留学生の姿によって、「元敵国人」のイメージを和らげるだけではなく、「占領者」としてのアメリカ人、そして「被占領者」としての沖縄人といったイメージを払拭し、冷戦期のアメリカの立ち位置を確証したのだ。

一方で、このオリエンテーションは、沖縄からの留学生にどのような影響を与えたのだろうか。「米留組」は、オリエンテーションでの経験をじつに楽しそうに語る。