──先進資本主義国が低迷にあえいでいるなかで、中国はこの30年あまり平均成長率が9%を超えています。これを、どう捉えたらいいのでしょうか?
中谷 西洋と違って、中国は資本による収奪という方法で成長してきているのではありません。資本家が大勢力になれない社会体制にありますし、なりたい人は華僑としてどんどん外に出ていってしまう。
中国国内では、資本家たちが結託して、寡占的な市場をつくれません。共産主義体制ということもありますが、それよりも中国は歴史的に極めて競争が激しい社会だからです。1000年も前の宋の時代には、すでに競争中心主義の経済体制が出来上がっています。高級官僚を登用するための科挙なども、身分はどうでもよく成績次第だから、激烈な競争となりました。
今でも、中国人は、これが利益になると思ったら、死に物狂いで働きます。自動車会社も一時は、100社くらいあったほどでした。もう利益が出ないような過当競争が繰り広げられる。それが、成長の源泉でもあるわけです。
中国共産党も、自分たちの政治力を阻害しない限りにおいては、自由に競争をさせます。共産主義と市場主義が全く別物として、存在しているわけです。
ただ、中国は、見事に外国資本をコントロールしています。重要な産業分野では、独資(100%外資)は許されません。必ず合弁という形で、外資をチェックし、利用する。海外の資本に、自国が収奪されるのを防いでいるわけです。
金融市場も同じです。アメリカが金融市場を自由化しろ、元を切り上げろ、そう要求しても、言を左右にしてのらりくらりと逃げています。海外から投機資金が入ろうとしても、一件一件完璧にチェックされる。だから、リーマン・ショックの影響も少なかった。中国は、アメリカの金融フロンティアにされることを免れたわけです。
この姿勢を、中国がいつまで保てるのかは、これからの世界を占ううえで、大きな要因となるでしょう。ただ、私は、人民元が完全自由化されれば、中国経済は危ういと考えています。