「許し、信じ、対話する」以外に手段はない

そのためには、相手のことをきちんと想像し、互いに過去を「許し合う」ことがポイントになる。昨日の殺戮を許そうといっているのではない。過去の遺恨を手放すべきである。

前野隆司『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント社)
前野隆司『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント社)

要するに、「目には目を、歯には歯を」という「復讐の本能」を理性で抑えるべきなのである。しかも、無理やり押さえ込むのではなく、「自然に」である。「憎い相手を許すなんて難しい」という気持ちも理解できなくはない。しかし、復讐の連鎖は誰も幸せにしないではないか。

キリスト教は愛の宗教といわれている。新約聖書には「右の頬を打たれたら左の頬も差し出せ」と記されている。簡単にいえば、「敵であっても許しなさい」と書かれているのである。キリスト教徒も、そうでない人も、その原点に戻るべきだ。

そうして相手を想像し、許したあとは「対話」することだ。相手のことを信じて、好奇心を持って対話する。

身近な例を挙げるなら、2022年現在、日韓関係は戦後最悪の状態といわれる。この問題もお互いを許すべきだ。必要なら謝るべきだ。どちらかに100パーセント非があると考えるのではなく、お互いの行き過ぎや言い過ぎを反省し合い、許し合うべきだ。

韓国のカルチャーが好きな日本人は、韓国について好奇心を持って理解できるだろうし、ねじれた歴史問題も、相手を信じて時間をかけて対話すれば解決に向かうだろう。

逆に、日本に関心を持つ韓国人が日本人と接してはじめて、自国の反日教育はやり過ぎだと気づいたという話は少なくない。

この問題は簡単ではないが、あきらめないことだ。許し、信じ、対話することからすべてははじまるのである。

カオス化する世界のなかで、多様な価値観を持つ人々がつながり合うためには、許し、信じ、対話することからはじめる以外に解決策はない。

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