中国にいる約9500万人の共産党員は、普段どのような活動をしているのか。中国在住経験のある経営学者の西村晋さんは「企業で働いている人でも、1カ月で6時間以上の学習、半年ごとに2本のレポート提出など、党員活動は『とても面倒で大変』というが、その代わりメリットもある』という――。

※本稿は、西村晋『中国共産党 世界最強の組織』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

中国、北京の天安門
写真=iStock.com/Sean Pavone
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世界ランキング上位にある中国国有企業

現役世代の中国人にとって、地域の党組織以上に身近な存在となるのが職場の党組織です。大学の党組織についてはこれまでも若干述べてきましたが、主に企業の党組織を本稿で詳しく述べていきます。

中国は日本と異なり、国有企業の存在感が非常に大きいです。特に国有企業では、企業内の党組織は大きな影響力を持ちます。企業の方向性を左右しますし、職場のガバナンスに対しても大きな力を発揮します。民間企業となるとこのような影響力は減退する傾向にありますが、一部の民間企業でも党組織が大きな力を持つケースはあります。

テンセントやアリババや恒大グループなど、日本でよく話題になる中国企業には民間企業が多いですが、「世界ランキング」で目立つ中国企業の多くは国有企業です。

トップレベルの国有企業である中国移動は携帯電話の契約者総数が9億4000万人(2020年現在)を超える世界最大の携帯電話事業者です。また、2020年に粗鋼生産量ベースでアルセロール・ミタルを追い抜き、世界最大の鉄鋼メーカーとなった中国宝武鋼鉄集団も、やはり国有企業です。

そして、フォーチュン・グローバル500などの世界企業ランキングの上位にランクインする中国企業を見ても、ステート・グリッド(国家電網)やペトロチャイナ(中国石油天然気)などの国有企業が目立ちます。

さらに、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによる世界銀行ランキングでは、2020年のベスト5は東アジアの銀行によって占められました。このランキングのベスト5のうち、5位の三菱UFJフィナンシャル・グループを除く4行(中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行)は全て中国の国有銀行です。

なぜ中国企業の意思決定は速いのか

中国企業は意思決定が速いとか、変化が速いとよく言われます。その理由について、「コンセンサスを重視せずに経営者が専横的に決めているからだ」と言われたり、「コンプライアンスの縛りが日本企業ほど厳しくないためだ」と論じられたりすることがよくあります。

確かにこのようなケースもなくはないのですが、必ずしもこのような原因によるものだけではありません。コンセンサス軽視やコンプライアンスの欠如を理由に挙げるのは、中国に対するステレオタイプも大いに作用している見方だと思われます。

組織にとって大切なことは、ビジョンを共有することと、人の和です。この点は、いかにも日本の古い体質の中堅企業の経営者のお説教のように聞こえてしまうかもしれません。もうそんな話は聞きたくないとおっしゃる社会人の読者の方も多いでしょう。

しかし、中国企業であっても「ビジョンの共有」や「人の和」が重要であるのは変わりません。構成員がビジョンを共有せず、また、従業員同士の関係が希薄で相互に不信感を抱いている組織は強い組織になり得ません。