「辺野古に造っても抑止力にならない」

2006年5月、SCC(日米安全保障協議委員会)では「再編実施のための日米のロードマップ」で、約8000名の第三海兵隊の要員とその家族約9000名は、部隊の一体性を維持する形で、14年までに沖縄からグアムに移転することが合意される。直後の同年7月には、米太平洋司令部が「グアム統合軍事開発計画」を策定、同9月にその内容をHPに公開した。米軍をグアム統合再編へと促したのは、SACO合意後の01年に勃発した「9.11同時多発テロ」以降、国際軍事情勢が激変したためだ。

宜野湾市長 伊波洋一●米海兵隊のグアム移転について、「なぜかマスコミはまったく書かない」と熱弁。野党時代、度々折衝したという鳩山首相は「このことをよくご存じのはずです」。

普天間飛行場を抱える宜野湾市は、米太平洋司令部がHPで公開した同計画を翻訳し、市のHPで紹介した。同市の伊波洋一市長と特別チームはこの計画から「普天間の海兵隊ヘリ部隊の大半がグアムに移転する可能性」を読み取り、米軍再編をテコに「辺野古への移設」を白紙に戻す対米交渉の必要性を訴えた。

危険極まりない普天間飛行場を1日も早く住民の側に取り戻したいはずの宜野湾市が、米軍の計画詳細まで研究して「辺野古への移設」に反対し続けるのはなぜか。伊波市長はこう説明する。

「辺野古に移設すれば普天間が返還されるという理屈では、普天間は永久に取り戻せません。辺野古に限らず、沖縄にもうこれ以上の新しい基地は無理だからです。誰よりも米側にそれをわからせて諦めさせなければなりません。また、政府は辺野古に基地を造っても抑止力にはならないことを理解すべきです。沖縄の基地というのは、日本を盾に米国本土を守るためにあるからです」

同市長の訴えを一言で要約すれば、「普天間の移設問題を返還問題に戻すと同時に、辺野古での新基地建設もゼロに戻すには、米軍が世界的な再編を進めている今が好機。政府は沖縄県民と一枚岩になって米側としっかり交渉せよ。沖縄経済の振興も日本の安全保障も、政府の出方に懸かっている」ということである。