カード普及のために行われた「理不尽な値上げ」

トイレットペーパーや紙オムツ、乳製品や冷凍食品など多くのモノが値上げした4月。その背景にはウクライナ情勢があるとも言われているが、それとはまったく無関係の、そして極めて理不尽な値上げもいつのまにか行われた。私たちが医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担分のことである。

記者の質問に答える岸田文雄首相=2022年4月26日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者の質問に答える岸田文雄首相=2022年4月26日午後、首相官邸

政府は昨秋、マイナンバーカードに保険証としての機能を持たせる、いわゆる「マイナ保険証」を導入した。なかなかマイナンバーカードの普及が進まない状況のなか、マイナ保険証の導入によって多くの人にマイナンバーカードを持たせたいとの意図が政府にあったのだろうが、そもそもマイナ保険証を使える医療機関が少ないことから、こちらの普及も遅々として進まない。そこで医療機関に診療報酬上の手当てを行うことで、対応しようする医療機関を増やそうとしたわけだ。

マイナ保険証が使える医療機関に対して診療報酬を加算するということは、すなわちその医療機関を受診した患者が窓口で支払う自己負担分も、それに応じて加算されることになる。例えば今回の加算によって、3割負担の人は初診料に21円、再診料に12円が上乗せされることになったのである。

ひっきりなしに政府がアピールする裏の事情

このところ政府は、大物俳優や話題のプロ野球監督などをマイナンバーカードのコマーシャルに続々と登場させ、その利便性をさかんに訴え続けている。そんな映像をTVや電車内ビジョンを通じてひっきりなしに見せられていれば、「そんなに便利になるなら、そろそろ私も」と思う人も少しずつ増えてきているかもしれない。そしてマイナ保険証によって利便性が高まり、より幸せな生活を享受することができるというのであれば、多少の負担増くらいは受け入れても構わないと考える人も出てくるかもしれない。

しかしちょっと待ってほしい。なぜ政府はここまで多額の費用を投入してマイナンバーカード、そしてマイナ保険証を普及させようと躍起なのか。私たち国民の健康管理・健康増進のためだけに一生懸命になってくれているのだろうか。

いや、政府が推し進める政策を一生懸命にPRするときには、その裏に必ず何らかの意図があると思っていい。それをしっかりと見極めておくことが重要だ。窓口負担の自己負担増ももちろん腹立たしいが、そもそもマイナ保険証は私たちの生活と人生にいかなる影響をおよぼし得るものなのか。そこをまず冷静に考えることから始めたい。