義母の異変

同居から3カ月経った2018年7月ごろ。68歳の義母が、好きな音楽や食の好き嫌いの由来、昔住んでいた家の近所の話など、以前聞いた話を初めて話すように語ってくるので、「忘れっぽくなってきているのかな?」と七瀬さんは思い始めていた。

9月ごろ、毎日の日課である散歩からなかなか帰ってこないことが増えたほか、買い物に行ったあと、マンションの郵便受けに買ってきた物を詰め込むようになり、七瀬さんはたびたび「なぜ?」と思うように。

10月、美容院に行くと言って家を出た義母が、10分ほどで帰宅。不思議に思った七瀬さんが「どうしたんですか?」と質問すると、「散歩してきた」と一言。「美容院は?」と聞くと、「今から行くのよ」と再度外出。30分くらいして帰宅した義母を見ると、全く髪型が変わっていないため、「美容院には行ったんですか?」と聞くと、「買い物してきた」と言うが、買い物に行けば必ず大好きなどら焼きなどの甘いものを買ってくる義母だが、その日は手に何も持たず、買い物してきたという感じはなかった。

11月。義母の部屋から悪臭が漂うようになり、夫とともに臭いの元をたどると、どうやら義母のタンスから臭っている。夫がタンスの引き出しを開けると、尿に汚れた下着が見つかった。義母に聞いても、「私じゃない」の一点張り。こうしたことが繰り返されるようになり、この頃から財布や鍵などの貴重品を度々紛失するように。

廊下でうずくまる母親と寄り添ってうつむく少年
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

さすがに「おかしい」と思った七瀬さんは、夫や義父に相談したが、「俺はわからない」と口をそろえる。らちが明かないと判断した七瀬さんは、地元の地域包括支援センターに相談。すぐに担当のケアマネジャーが決まり、義母の認知症検査や、要介護認定調査を行うことになった。

「おそらく義母は、散歩や買い物のときに、トイレを失敗したり漏らしてしまったりした下着やズボンを、タンスに隠していたのだと思われます。財布や鍵を失くしたときは、たいてい私が犯人にされていますが、だいたいタンスや押入れなど、いつも同じ場所に隠すため、すぐに見つかるのでまだ大丈夫でした」

結果、義母は、アルツハイマー型認知症で要介護1。12月からデイサービスを週3回利用することに。最初は「行きたくない」と言っていたが、だんだん楽しそうに通うようになっていった(以下、後編)。

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