正体を現した夫と義両親

同居に向けた準備期間中、七瀬さんは1歳になったばかりの息子を抱えていたため、同居や引っ越しの準備は夫や義両親に任せきり。しかし、このことが後戻りできない最悪の事態を招いた。

「同居のことは結婚前からちょこちょこ言われていて、同居するマンションは、義両親が同居のために買った新しいマンションだと夫から聞いていたのですが、これも嘘でした……」

一度だけ同居するマンションを見に行ったことがあるが、夜で暗く、息子を連れていたため短時間でよく見えず、すでに義両親が住んでいた部屋はゴミ屋敷状態だった。帰宅後、「話が違うよ!」と七瀬さんが夫に抗議すると、「両親がボケてるんだよ」「俺らの部屋はきれいに片付けるから」と苦しすぎる言い訳をするばかり。

2018年4月。結局、予定通り引っ越すことに。移った先は、築20年以上経っているであろうマンション。義両親は新しいマンションなど購入しておらず、義両親が住んでいたマンションに、七瀬さん一家が移り住んだだけだったのだ。

もちろん2世帯仕様ではなく、玄関もキッチンも風呂もトイレも共同の完全同居。最初は68歳の義母も家事をしていたが、1週間もしないうちに義母の不器用さが目に余るように。

洗濯物の干し方ひとつとっても、義母は洗濯物をしっかり開かず、洗濯もの同士の間隔を空けずに干すため、生乾きになって雑菌などが繁殖しやすく、臭いも気になる。そこで七瀬さんが、「こうすると早く乾きますよ」とアドバイスしたところ、「私はこのやり方で何十年もやってきたんだから、口出さないで!」と反発。これには夫も、「希子の言うように干したほうがいい」と言ってくれたが、その度に義母は反発する。

掃除に関しても、義両親の部屋はゴミ屋敷状態。にもかかわらず、七瀬さんがリビングを掃除したあと、これみよがしに床をなで回してゴミを集め、勝ち誇った顔で「まだ汚い」アピール。

料理では、七瀬さんが作ったものに手を付けず、買ってきたどら焼きなどの甘いお菓子を食べたり、七瀬さんが作っておいた料理を捨ててしまったりすることもあった。

どら焼き
写真=iStock.com/deeepblue
※写真はイメージです

七瀬さんと義母は、事あるごとに衝突するようになり、半年も経たないうちに家事全般が七瀬さんの仕事になっていた。

七瀬さんが「見下されている」と感じていた65歳の義父は、定年後再雇用され、平日は仕事に行っているが、週末は必ず家で酒を飲んでは泥酔する。酔っ払うと義父は、しばしば手がつけられない状態になった。

同居からしばらく経ったある夜、酒を飲みながら夕食を食べ、食卓でくだを巻く義父に対し、七瀬さんが「もう食べないなら片付けますね」と言って、冷めきった料理や空いた食器を下げようとしたところ、突然怒鳴りながら壁を叩き、胸ぐらをつかんで殴りかかってきたことも。七瀬さんがとっさに、「どうぞ殴ってください! 警察呼びますから!」と言うと、義父はしぶしぶ握った拳を降ろしながらも、執拗しつようににらんできた。

さらに、唯一の救いとなるはずだった夫も豹変ひょうへんした。

夫は息子の誕生を心から喜んではいたものの、子育てには全く無関心。ほとんど七瀬さんのワンオペ状態だったのだ。そこへ同居が始まると、もともとお酒好きで、月に1〜2回は飲み歩き、帰宅が遅かった夫が、だんだん帰宅が遅い日が増えていく。

家にいる時間は自室に閉じこもり、DVDを見たりゲームをしたり。自ら息子と関わろうとせず、子育ても家事も、七瀬さんが細かい指示を出して5回頼めば、1回は嫌々手伝ってくれる程度だった。

「夫には、『お義母さんからはいびられ、お義父さんからは見下されていて、酔っ払うたびにけんかを売られているんだよ』と話しましたが、真剣に聞いてくれません。そもそも同居してからというもの、ほとんど飲み歩いていて家にいないか、いても自室でDVDやゲームに夢中なので、私がどんな目に遭っているか知らないし、知ろうともしてくれなくなりました」

義母の嫁いびりは地味に続けられた。七瀬さんが義母に贈った誕生日プレゼントを、封も開けずに捨てたり、外出時や帰宅時に、玄関にある七瀬さんの靴を必ずわざと踏み潰し、七瀬さんの靴だけいつもぺちゃんこにされたりしていた。